立志式に想う 金印倶楽部-2 ― 2021年02月26日 10時42分

梅の花、満開にして、春近し。コロナ禍のなか、例年通りであれば、2月の最終金曜日の今日、福岡市立中学校では立志式がピークを迎える。
立志式と言っても、一般には馴染みの薄い言葉かもしれない。文字通り「志を立てる式」で、その由来は越前の幕末の志士・橋本左内が数え15歳のときに書いた「啓発録」の中の一節、「立志」からとされる。
対象は、左内と同じく15歳を迎える中学2年生。将来に向かって大きな目標を立て、それを成し遂げようと誓い、宣言する式典である。イメージとしては、大人になる儀式だった元服に近い。それだけに生徒にも、教師にとっても、記念碑的な学校行事になっている。
ぼくは金印倶楽部の関係者として、いくつかの立志式に参列したことがある。
この日にそなえて、多くの学校で2年生たちは自分の夢や将来の進路、それを実現する決意などを作文に書く。そして、父兄が見守る教室で一人ひとり発表する。どんな職業を選ぼうとしているのか、何を考えているのか、クラスメイトの意外な側面もわかる特別な授業である。
親の職業を尊敬しています、同じ道に進みます、と力強く述べる生徒もいて、そうなると親御さんの涙腺は一気にゆるみ、あの子がいつの間にか、こんな大人びたことを言うなんて、の連発だった。人目もはばからず、涙をぬぐう姿があちこちに。
立志式では選ばれたクラス代表が2年生全員の前で作文を読み上げる。文章を全部、暗記している生徒もいて、来賓席にいたぼくは、同じ歳のころの自分とは雲泥の差だと、ひたすら感心するばかりであった。
立志をテーマにした作文は原稿用紙に2枚。NHKの「青年の主張」じゃあるまいし、そんな作文なんて、一度も書いたことがないという人も多いのではあるまいか。
担当教師の話によると、原稿用紙は広げたものの、何を書いていいのかわからずに、頭を抱え込む生徒は少なくないとか。そうして悩んで、悩んで、親や教師にも相談して、ひと月以上も時間をかけて、何度も書き直すうちに、生徒たちは目に見えて成長するという。
さて、2017年からスタートした金印倶楽部の立志支援活動にも少しふれておく。(小学校への金印レプリカ贈呈活動は1996年から)
内容は、展示用と教材用の国宝・金印のレプリカの贈呈。併せて、国会議員や知事職の経験者、地元有力企業の元トップなどによる「中学生の立志を励ます講演」の2本立てで、実施した学校からは、来年もお願いしますという声も挙がっていた。
その方面ではご意見番的な存在の講師の方々も、ビジネスマンが相手の講演よりもやりがいを感じたようで、「これからも、よろこんで協力します。いつでも遠慮せずに使ってください」と好評だった。
中学生の立志支援活動を通じて、ぼくは目を開かされたことがある。
それは、日常の景色の一部として、あまり関心もなく眺めていた中学生たちが、実はその若々しい胸の中に、立志の芽を育てていることだった。かれらはみな志を持っている、そのことに気づこうともしなかった。彼らのことをよく見ていなかった。
立志式は中学2年生だけの儀式ではなかった。逆に若い彼らから触発され、少年時代の記憶の箱の中から「志」という言葉を久々に取り出して、わが身の半生をもう一度なぞるようにして振り返らせてくれたのである。
昨年末に解散した金印倶楽部については、いいニュースもある。聞くところによると、共に活動してきた教職員OBの方々の手によって、まだ金印レプリカを寄贈できていない中学校のすべてに贈り届けるまで、贈呈活動を続ける計画だという。
■「啓発録」は講談社学術文庫で読むことができる。
■写真は2017年2月撮影
立志式と言っても、一般には馴染みの薄い言葉かもしれない。文字通り「志を立てる式」で、その由来は越前の幕末の志士・橋本左内が数え15歳のときに書いた「啓発録」の中の一節、「立志」からとされる。
対象は、左内と同じく15歳を迎える中学2年生。将来に向かって大きな目標を立て、それを成し遂げようと誓い、宣言する式典である。イメージとしては、大人になる儀式だった元服に近い。それだけに生徒にも、教師にとっても、記念碑的な学校行事になっている。
ぼくは金印倶楽部の関係者として、いくつかの立志式に参列したことがある。
この日にそなえて、多くの学校で2年生たちは自分の夢や将来の進路、それを実現する決意などを作文に書く。そして、父兄が見守る教室で一人ひとり発表する。どんな職業を選ぼうとしているのか、何を考えているのか、クラスメイトの意外な側面もわかる特別な授業である。
親の職業を尊敬しています、同じ道に進みます、と力強く述べる生徒もいて、そうなると親御さんの涙腺は一気にゆるみ、あの子がいつの間にか、こんな大人びたことを言うなんて、の連発だった。人目もはばからず、涙をぬぐう姿があちこちに。
立志式では選ばれたクラス代表が2年生全員の前で作文を読み上げる。文章を全部、暗記している生徒もいて、来賓席にいたぼくは、同じ歳のころの自分とは雲泥の差だと、ひたすら感心するばかりであった。
立志をテーマにした作文は原稿用紙に2枚。NHKの「青年の主張」じゃあるまいし、そんな作文なんて、一度も書いたことがないという人も多いのではあるまいか。
担当教師の話によると、原稿用紙は広げたものの、何を書いていいのかわからずに、頭を抱え込む生徒は少なくないとか。そうして悩んで、悩んで、親や教師にも相談して、ひと月以上も時間をかけて、何度も書き直すうちに、生徒たちは目に見えて成長するという。
さて、2017年からスタートした金印倶楽部の立志支援活動にも少しふれておく。(小学校への金印レプリカ贈呈活動は1996年から)
内容は、展示用と教材用の国宝・金印のレプリカの贈呈。併せて、国会議員や知事職の経験者、地元有力企業の元トップなどによる「中学生の立志を励ます講演」の2本立てで、実施した学校からは、来年もお願いしますという声も挙がっていた。
その方面ではご意見番的な存在の講師の方々も、ビジネスマンが相手の講演よりもやりがいを感じたようで、「これからも、よろこんで協力します。いつでも遠慮せずに使ってください」と好評だった。
中学生の立志支援活動を通じて、ぼくは目を開かされたことがある。
それは、日常の景色の一部として、あまり関心もなく眺めていた中学生たちが、実はその若々しい胸の中に、立志の芽を育てていることだった。かれらはみな志を持っている、そのことに気づこうともしなかった。彼らのことをよく見ていなかった。
立志式は中学2年生だけの儀式ではなかった。逆に若い彼らから触発され、少年時代の記憶の箱の中から「志」という言葉を久々に取り出して、わが身の半生をもう一度なぞるようにして振り返らせてくれたのである。
昨年末に解散した金印倶楽部については、いいニュースもある。聞くところによると、共に活動してきた教職員OBの方々の手によって、まだ金印レプリカを寄贈できていない中学校のすべてに贈り届けるまで、贈呈活動を続ける計画だという。
■「啓発録」は講談社学術文庫で読むことができる。
■写真は2017年2月撮影
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