また車を買い替えた人2025年01月18日 18時28分

「あれっ、違うな」
 明け方、ベランダから駐車場を見たら、ぼくの軽四の横にある車が変わっていた。昨日の昼過ぎまではいつもの黒のアウディのセダンだった。それが同じ黒でもワーゲンのハッチバックになっている。
「そうか、あの人、また買い替えたんだ」
 アウディだって、ぼくからすればまだまだ新車も同然だった。そのピカピカの高級車に、ぼくの軽四の助手席側のドアがぶつかって、傷をつけたのは去年の7月はじめのこと。保険で済んだからよかったものの、修繕代と代車の費用を合わせて、ン十万円かかった。
 そうやってきれいにしたばかりなのだ。こちらの気持ちとしては、とくに「きれいにしたばかり」の「ばかり」を強調しておきたい。
 持ち主のWさんはいい人である。
 ぶつけたときも、「突風のせいだから仕方ないですよ」と笑顔で勘弁してくれた。「どうせ中古になるんですから。車はぼくの道楽ですから、だいたい1年ごとに買い替えています」とも言っていた。
 本当にその言葉通りだった。
 次から次に車を買い替える人はほかにもいるようだが、そういう趣味というか、神経がぼくにはわからない。いや、もっと正確に、正直に言えば、そんなお金持ちになったことがないから、いったいどこが不満なのかがわからない。
 彼が車に乗って出かけるのは、せいぜい週に2回ほど。それもほんの数時間だけで、あとはほとんど停まったままだ。あのとき痛い目にあったカミさんは、いまだにこんな恨み言を言っている。
「乗らないで陳列するだけでしょ」

■室見川の土手の桜並木はカササギのお気に入りの場所で、散歩中によく見かける。