一発、逆転を祈る2021年05月28日 19時18分

 人は見たくないことから目をそらしたがるものだ。日本の近未来の現実を突きつけるこんな数字も、その典型的な事例だろう。
 厚生労働省の発表によると、全国の自治体が2020年の1年間に受理した妊娠届の件数は前年比4・8%減の87万2227件で、過去最少を更新した。そのため21年の出生数は80万人を割り込み、70万人台になることが濃厚という。
 減少の原因はまたしてもコロナウィルスにあるらしい。感染拡大による出産や子育ての不安から「妊娠控え」が起きたようだ、というのである。
 理由はともあれ、とうとう1年間に生まれる子どもの数が80万人を切るという。実に恐るべき事態と言わざるをえない。
 試みに、80万人のあかちゃんが大人になったとき、子どもの数がどうなるか、簡単な計算をしてみよう。
 80万人のうち、男と女の割合が半々と仮定すると、女性の数は40万人。その全員が子どもを2人ずつ産むと80万人。これなら現状を維持できる。
 しかし、それはまったく非現実的な話である。
 いまでも30代後半の女性で未婚の人は全体の約3割もいる。この状況が将来も続くとしたら、女性40万人のうち、30代後半までに結婚する女性は、日本中でたった28万人しかいないことになる。これは福岡ソフトバンクホークスのホームゲームが満席で、わずか7試合やれば(合計観客数は26万9920人)、ほぼ到達する人数でしかない。
 もちろん、結婚せずに子どもを育てるシングルマザーの人たちもいるだろうが、大勢には影響ないだろう。これでどうやって、わが国の人口を増やすというのだろうか。
 もうひとつ、ぼくは人口減について、別の計算をしたことがある。
 国の推計では、2065年の日本の人口は3,900万人も少なくなる。これは現在の大阪府より以西の中国、四国、九州・沖縄の全府県を合計した人口と同じ数である。つまり、来年生まれる子どもたちが43歳になったときには、いま大阪から西に住んでいる人口分がすっぽり消えてなくなっているのだ。あくまでも推計ではあるが。
 もはや、想像を絶する日本の姿である。だが、このままではそうなってしまう。
 このあたりのことを政府の発表はともかく、新聞やテレビは「少子高齢化社会」というお決まりの言葉ではなく、もっと身近に、わかりやすく、リアルに報道できないものかとおもう。
 身につまされる話はぼくのまわりにもいっぱいある。自分の代で、家系が絶えてしまうという人がたくさんいるのだ。
 子どもがいない。息子はいるけど、結婚する気もないし、相手もいない。養子になってくれる人なんていない。まだまだと言っている間に、適齢期を過ぎてしまった。本人も親も焦っているけど、まったくご縁がない。うちの職場も独身だらけよ。
 だれの責任でもないし、別に批判されることでもないが、こんな話がぼくのまわりだけでもゴロゴロある。
 わが家はさいわい二人の息子に恵まれた。だが、ぼくの家系の存続もだんだんあやしくなってきた。
 このままでは、そのうち結婚する相手がいればどんな人だっていい、なんてことになりかねない。ある日突然、銀歯がギラリと光る中年のオバサンが息子の嫁さんになっても、決してがっかりしたり、目をそらしてはいけないということか。
 一発、逆転を祈るのみ。

■写真は、4月9日のブログで紹介したレンゲ畑の隣から撮影したもの。今年も菖蒲の花がきれいに咲いている。