スーパーで胸がときめく2022年08月03日 12時43分

 主夫だから毎日買い物に行く。いちばん近いスーパーまで歩いて1分ほど。夕食をつくっているときに、「しまった、調味料がない!」と気づいたときなど、まことに便利である。
 そういえば以前よく飲みに行っていた居酒屋は、街中(まちなか)の食品スーパーが入っているビルの地下1階にあって、そこの大将は「うちの超大型冷蔵庫はこの真上にありますから。何でもそろっていますから」と自慢していたっけ。
 たとえば、鶏のから揚げを注文するとエプロン姿の奥さんが「ちょっと待っててね」と財布を片手に階段を登って行くのである。こんな調子だから、客に出す食品の在庫は極力少なくてすむ。店舗は立地がいちばん重要というセオリーをこの夫婦はよくわかっていた。
 さて、昨日のこと、車で4、5分の別の小型スーパーで、ちょっとだけ胸のときめくことがあった。ときめかせてくれたのは、レジのパートの女性である。
 この店には感じのいいパートさんが3人いる。感じの悪いパートさんは2人。いずれも20代後半から30代はじめぐらいで、あとはどちらともいえない中間の人である。
 感じの悪い人は、どうしてあんなに自分の方から感じを悪くするのだろうか。ブスッとして、ぜったいに口なんて聞いてやるものか、という顔をしている。客が話しかけても、二コリともしない。どこか近寄りがたくて、実に機械的である。本人だって、たのしくなかろうに。(こちらの気のせいかな)
 こういう人には近づきたくないから、ぼくも、カミさんも別のレジの列に並ぶことにしている。
 その点、感じのいいパートの女性はみなさんいい顔をしている。いい顔をしているから、美人に見える。美人とはいえないかなぁという人でも、性格のよさが顔に出ているから、かわいらしく見える。そうなるとこちらも、その人の顔を見たくなる。ニコッとされると気分がいい。
 だからといって、じっと見つめてはいけない。そこはちゃんと自制しなければ。
 ところが、昨日、見慣れないパートの女性がふたりレジに立っていた。この職種にも人の入れ替わりがあって、とくに学生さんは長く続かないようだ。最近では白髪頭の男性もレジに進出してきた。
 後ろ姿の見慣れない人のひとりはパーマをかけた人、もうひとりは大胆なショートカットの人だった。そのふたりがからだを回転させたので、すこしはなれところから顔を見ることができた。
 びっくりした。
 パーマの女性はあの感じのいい人だった。いつもは長い髪の毛を後ろで束ねていて、博多人形のような顔だちによく似会っていたのだが、パーマもまた素敵である。
 感じのいい人は、何をやっても感じがいいのだ。ぼくは少しだけ胸がときめいた、きっと人妻だろうに。
 ショートカットの人は、あの近づきたくない人の一番手だった。長く伸ばしていた黒い髪の毛がない。そして、まるで人が変わったように愛想よく笑顔をふりまいているではないか。
 えっ、何があったの? どういう心境の変化? 恋人でもできたの?
 人は変わる。同じ人物でも、昨日会った人が今日も同じとは限らない。
 思いきってイメージチェンジをはかった彼女の勇気には心から敬意を表する。でも、それはそれで気色が悪くて、やっぱりまだ近づきたくないのである。
 店の鮮度アップをはかるには、常に店のなかを変化させることが必要だ。その手段としては、商品の陳列やポップなどの見た目を変えるのが一般的だか、レジの女性の髪形を変えるのも効果あり、か。女性のヘアースタイルの変化が与える印象は、とうてい男どもの及ぶところではない。
 ぼくは今日もあのスーパーに行ってみようかなとおもっている。

■午前中に室見川の遊歩道を歩いて、遠まわりしながら本屋に行った。大分県の地図を買った。次に書こうとおもっている散文で、その舞台となる土地の具体的なイメージをつかむためにほしかった。
 このところまとまった雨が降っていないので、水かさの少ない室見川には小さな中州ができて、その砂地に野鳥が5羽いた。カワウが2羽、コガモが3羽。その向こうにはコサギも。水鳥たちにも、この異常な暑さはかなりこたえていることだろう。