全室、ただいま工事中2023年04月19日 22時49分

 明日は二十四気の穀雨で、昨夜の気象情報では一時、雨が降る予報だった。
 春の終わりの生暖かい雨を浴びて、竹林のなかのかわいい筍たちは早送りの映像のようにぐんぐん伸びるはずである。よし、ひと雨降ったら、もう一度、旬の筍でも食うかと楽しみにしていたら、今朝の天気予報は晴れのち曇りに変わっていた。
 ま、予報だからね、よくあることです。
 筍と言えば、ここ数年の間のことだろうか、その道の専門家が「雨後の筍」のように出てきた。ニュースでも、ワイドショーでも、こんな分野にも専門家がいるのかと面食らうような職業人が出てくる。インスタントラーメンでも、100円ショップの話でも、そんな人物がひょっこり現れる。
 なぜか経験豊富な年寄りはいない。どちらかと言えば若い人が多い。そして、みなさん、物怖じする風もなく、堂々としている。
 途中だが、こうして思いつくままに原稿を書きはじめると、やはり書くのはたのしい。
 ずいぶん長い間、このブログを休筆したから、心配している友もいる。そうとわかっていても、書く気力、体力がなかった。いざ机に向かっても、腹の傷が痛くて、からだを折るように突っ伏してしまい、そのままじっとしていることが多かった。
 でも、少しずつ体調は戻っている。食欲も出てきた。そこで遅まきながら近況報告をしておこう。
 体調の回復には思い当たることがある。ここ1週間ばかり、「やるしかない」と奮起して、からだを動かしたのがよかったようだ。
 実はいま公団住宅の3DKの狭いわが家は、引っ越しの真っ最中のような有様である。先週は朝から夕方近くまで3日間続けて、それぞれの部屋で壁面の結露防止(断熱材取付)工事があった。翌日は壁面クロスの張り替えの前半部の工事だった。
 その工事を受け入れる準備が大ごとだったのだ。カミさんは仕事で、自宅にはこんなぼくしかいなかったのだから。
 工事会社からは、作業のスペースを確保しておくように言われていた。言われた通りに、洋服箪笥から食器棚、本棚、机などを壁から移動させ、カーペットも上げて、押し入れの中のモノもぜんぶ引っ張り出した。
 箪笥の裏側は、ゴミとほこりのにぎやかな溜り場になっていた。隠れていた壁紙は波のようにうねったまま剥げていた。見なければ、見ないですんでいた歴史の産物が、暗闇からいっせいに蜂起した感じである。
 ベランダに本棚や布団を積み上げて、雨に濡れないようにビニールシートをかけた。小物類を箱詰めにしたり、食器をまとめたり、別の部屋に箪笥や机を押し込んだり、カーテンレールを外したり。
 カミさんも気が気でなかったようで、あらかじめ工事の始まりに合わせて連休をとっていた。工事中はお茶を飲む空間を確保するのがやっとで、テレビも見れない、WiFiも使えない。夜は工事の人が敷いてくれた薄いビニールマットの上に布団を重ねて、荷物に囲まれて寝た。
 二人ともへとへとになってしまったが、お陰でこの難所を乗り越えて、なんとか無事にゴールできそうである。
 いま、この「一畳一夢」の部屋はすっきりしている。手足も自由に伸ばせるし、とても気分がいい。3畳の部屋がこんなに広かったんだ、そして何よりも、モノに囲まれた生活が必ずしも幸せのバロメーターではないことに気がついた。(※修正 : 3畳ではなく、本当は4畳でした)
 クロス工事は明日で終わる。明後日は新品の襖(ふすま)も届く。
 こうして全部の部屋がきれいになるのは、ここに引っ越して来て以来だから、30数年ぶりのことである。カミさんが職場でそんな話をしたら、まわりの女性たちは「ええっ、30年以上も住んでいるの」と、みなびっくりしたらしい。
 ちなみに、今回の大掛かりな工事費は無料である。長い間、公団で暮らしている人への利点で、せっかく無料で壁がきれいになるチャンスなのに、これらの工事を断る人もいるという。
 聞くところでは、それは独り暮らしや高齢者の夫婦ふたりきりの人たちで、部屋いっぱいに増えてしまった荷物をとても片付られず、改修工事をあきらめてしまうとか。
 今回の工事を依頼したのは昨年12月はじめ。そのとき「工事は手術が終わって、元気になってからお願いします」と予約していた。
 それからは、そうなってほしい、絶対にそうしてみせる、と自分に言い聞かせていた。幸いにして、その通りになったわけだ。
 窓の向こうには、新しい命の新緑が光っている。今回の工事を体調回復と再起への節目にしたい。

■手術前に、カミさんと数株の苗を植えた花壇が、遠目にも花盛りになっている。花の世話をしていると、通りかがりの人から「きれいですね」、「いつもお花の手入れをありがとうごさいます」と時折り声がかかる。
 こちらにその気はなかったのだが、いつの間にか、ぼくたち夫婦はこの花壇の世話係にされてしまったようである。

■このブログ、一度アップしたがどうにも気に入らず、ボツにした下書き原稿の一部を復活させて、部分的に書き換えた。まだ原稿を書くカンや集中力が戻っていない。(4月21日)