おいおい、無理するなよ ― 2026年03月17日 17時24分
えっー、もう17日か。あらら、横浜組がやってくる来週の月曜日まで、あと6日しかない。
ふたりは正午過ぎに博多駅に着く。たぶん軽く昼飯をとって、それから荷物を置くために駅近くに予約しているホテルに行くのかな。
14時。横浜組のA君とKa君、それから小倉から駆け付けるHa君と駅前で待ち合わす予定だ。彼らは杖をついたぼくをいっせいに見るだろう。すぐ横にカミさんが付き添っているのに気がついて、本当に独りで出歩くのは無理だったのかとショックを受けるかもしれないな。
最初が肝心だ。その場を明るくするために黒い帽子を取って、この見事なハゲ頭を丸出しにして、ニカッ! と笑ってやろうかな。
昨日の午後、彼らとの昼飲み会に備えて、室見川河畔の遊歩道を上流に向かってゆっくり歩いた。1kmほど先の橋を渡って、向こう岸を引き返す。途中、木製のベンチに腰掛けて、日差しを浴びながらうつらうつらした。
この日の歩数は7,188。歩幅が極端に狭くなっているので距離的には短いのだが、それでもここ最近ない歩数である。とにかく少しでも足元の不安をなくしておかねば。
後輩のKa君は気合が入っている様子。ぼくと同じ病気で、抗がん剤の点滴を打っているのに、寸暇を惜しむように動きまわっている。
つい先日は、70kmもはなれた埼玉県下の家具店まで250ccのバイクで出かけたという。そして、その日のうちに気に入ったソファを自宅へ持ち帰るために、今度は奥さんを車に乗せて、また70kmを往復したそうだ。
同じ道を2往復、合計280km。嫌にならなかったのだろうか。
おいおい、無理するなよ。掛けがえのない、大事なからだなのだからな。
一昨日は相模湾名物のシラスを求めて、またもや愛車のバイクにまたがって、平塚市の直売所まで遠征。列に並んで、生のシラスを買って来たという。そして、昨日は五木ひろしのコンサートを聴きに有楽町まで出かけて、奥さん孝行をしたそうだ。
よくやるよ。そんなに飛ばして、大丈夫なのか。
ぼくよりふたつ若い73歳。元気を前面に打ち出して、彼なりの闘いに精いっぱい挑んでいるのだろう。日本の政治に対して危機感を持ち、熱い意見を述べたメールも多くなってきた。
A君はそんなKu君のことを心配しながら、「首に縄をつけても、Kuを九州に連れて行きます。先輩たちに会わせます」と言っていた。
彼らはそんなで勢いでやって来る。
待ち受けるこちら側が、「もうボク、ダメ。動けない」なんて、言っていられない。
もうひとつ驚いたのは、78歳になったばかりの五木ひろしのことだった。2時間以上のステージで、36曲を元気よく歌いあげたという。途中、息を切らして、水を飲んで呼吸を整える場面もあったとか。
人のエネルギーは底知れないものがある。そのことに気づかされて、元気をもらったここ数日だった。
■わが家の狭いベランダにも春がやって来た。ことしもカミさんがきれいな花を咲かてくれた。
ふたりは正午過ぎに博多駅に着く。たぶん軽く昼飯をとって、それから荷物を置くために駅近くに予約しているホテルに行くのかな。
14時。横浜組のA君とKa君、それから小倉から駆け付けるHa君と駅前で待ち合わす予定だ。彼らは杖をついたぼくをいっせいに見るだろう。すぐ横にカミさんが付き添っているのに気がついて、本当に独りで出歩くのは無理だったのかとショックを受けるかもしれないな。
最初が肝心だ。その場を明るくするために黒い帽子を取って、この見事なハゲ頭を丸出しにして、ニカッ! と笑ってやろうかな。
昨日の午後、彼らとの昼飲み会に備えて、室見川河畔の遊歩道を上流に向かってゆっくり歩いた。1kmほど先の橋を渡って、向こう岸を引き返す。途中、木製のベンチに腰掛けて、日差しを浴びながらうつらうつらした。
この日の歩数は7,188。歩幅が極端に狭くなっているので距離的には短いのだが、それでもここ最近ない歩数である。とにかく少しでも足元の不安をなくしておかねば。
後輩のKa君は気合が入っている様子。ぼくと同じ病気で、抗がん剤の点滴を打っているのに、寸暇を惜しむように動きまわっている。
つい先日は、70kmもはなれた埼玉県下の家具店まで250ccのバイクで出かけたという。そして、その日のうちに気に入ったソファを自宅へ持ち帰るために、今度は奥さんを車に乗せて、また70kmを往復したそうだ。
同じ道を2往復、合計280km。嫌にならなかったのだろうか。
おいおい、無理するなよ。掛けがえのない、大事なからだなのだからな。
一昨日は相模湾名物のシラスを求めて、またもや愛車のバイクにまたがって、平塚市の直売所まで遠征。列に並んで、生のシラスを買って来たという。そして、昨日は五木ひろしのコンサートを聴きに有楽町まで出かけて、奥さん孝行をしたそうだ。
よくやるよ。そんなに飛ばして、大丈夫なのか。
ぼくよりふたつ若い73歳。元気を前面に打ち出して、彼なりの闘いに精いっぱい挑んでいるのだろう。日本の政治に対して危機感を持ち、熱い意見を述べたメールも多くなってきた。
A君はそんなKu君のことを心配しながら、「首に縄をつけても、Kuを九州に連れて行きます。先輩たちに会わせます」と言っていた。
彼らはそんなで勢いでやって来る。
待ち受けるこちら側が、「もうボク、ダメ。動けない」なんて、言っていられない。
もうひとつ驚いたのは、78歳になったばかりの五木ひろしのことだった。2時間以上のステージで、36曲を元気よく歌いあげたという。途中、息を切らして、水を飲んで呼吸を整える場面もあったとか。
人のエネルギーは底知れないものがある。そのことに気づかされて、元気をもらったここ数日だった。
■わが家の狭いベランダにも春がやって来た。ことしもカミさんがきれいな花を咲かてくれた。
仕事をしたくなった ― 2026年03月12日 18時09分
先週末は思い出したくもないほど、からだがきつかった。副作用の症状を数え上げたら、両手の指でも足りない。
月曜日は3週間ぶり、6回目の抗がん剤の点滴の日だった。がっくり疲れ果てて、手すりをつかまえて、ヨイショ、ヨイショと声を出しながら、団地の階段を登る。視力もはっきり落ちた。味覚も、食欲もなし。懸命にカミさんの手料理を胃袋に押し込んだ。
それでもひと晩寝たら、体調はよい方へと切り替わった。深い谷底に落ちて、気が弱くなるときもあるけれど、こうして立ち直る。この繰り返しが、「薬が効いている証拠だ。オレは負けない」という自信になっている。こうして長丁場の闘い方に慣れて、何度も再発をしながら、10年以上もガンと共存している人のようになっていくのだろうか。
草木が芽吹く春、3月。調子の悪いことばかり言ってはいられない。
元気モードになった勢いで、今後の月間スケジュール表を作り直した。これまで優先していた項目は、病院に行く日と健康・運動の記録だったが、それらを後ろにまわして、「仕事」をトップに持って来た。もちろん、仕事とは人から使われるのではなくて、自分からすすんでやりたい、それもひとりで楽しみながらできることである。
カミさんとこんな話をした。
「このブログ、オレが死んだ後もしばらく置いといてもらおうかな。オレは原稿を書くことぐらいしかできないし、消してしまうとなにも残らないからな」
「消したら、もったいないよ。ブログはぜんぶコピーして、取っておこうよ。孫のKoちゃんが大きくなったときに、おじいちゃんはこんなことを考えていたんだよと読んでもらったらいいじゃない。そうしようよ」
縁起でもない夫婦の会話になったが、まだ2歳2か月の幼い孫がこのブログを読む様子を想像したことはなかった。「もったいないよ」となんて言われるとおもっていなかった。予期せぬお褒めの言葉をかけてもらったみたいで、たちまち気分がよくなって、ちょっとばかりやる気が出てきた。
そうかもな。Ko君がオレからのメッセージとして、読んでくれるかもしれないな。
いまの世の中、恥ずかしい大人たちが大手を振って歩いている。
トランプ、ネタニヤフ、プーチンの酷さは見たことがない。以前も触れたが、いますぐ隔離して、精神鑑定を受けさせたいほど狂っている。だが、本人たちは正しいことをやっていると頭から信じているらしい。自分への批判はいっさい受け付けない。そして、平気で人を殺す。Ko君、そんな時代があったんだよ。
いまごろこんなことを口にする人は見かけなくなったが、アメリカで起きたことは数年遅れで、日本でも起きるのは歴史の教えるところだ。格差、断絶の社会もそうである。アメリカファースト、日本ファースト。次はなんだろうか。
こうなることはわかっていたのに、ときの首相と一部の財界人や学者たちは日本の強みを弱みと断じて、この国をガタガタにぶっ壊す路線へと突っ込んで行った。「失われた10年」は20年になり、30年を過ぎ、まだ方向転換の兆しも見えない。
日本の政治家たちは、大衆に迎合して、選挙で嫌われることはいっさい口にしなくなった。消費税の廃止や減税なんて、まともに将来のことを考えたら、正気の沙汰とはおもえない。
無抵抗のまま、膨大な国の借金を背負わさせられる若い人たちに立ち上がってほしいとおもう。何も言わないと、何も変わらないのだから。
また最後は政治の話になった。でも、これも「反逆精神。若さの証拠」としておこう。
■室見川の河津桜は散ってしまった。きれいだったなぁ。
月曜日は3週間ぶり、6回目の抗がん剤の点滴の日だった。がっくり疲れ果てて、手すりをつかまえて、ヨイショ、ヨイショと声を出しながら、団地の階段を登る。視力もはっきり落ちた。味覚も、食欲もなし。懸命にカミさんの手料理を胃袋に押し込んだ。
それでもひと晩寝たら、体調はよい方へと切り替わった。深い谷底に落ちて、気が弱くなるときもあるけれど、こうして立ち直る。この繰り返しが、「薬が効いている証拠だ。オレは負けない」という自信になっている。こうして長丁場の闘い方に慣れて、何度も再発をしながら、10年以上もガンと共存している人のようになっていくのだろうか。
草木が芽吹く春、3月。調子の悪いことばかり言ってはいられない。
元気モードになった勢いで、今後の月間スケジュール表を作り直した。これまで優先していた項目は、病院に行く日と健康・運動の記録だったが、それらを後ろにまわして、「仕事」をトップに持って来た。もちろん、仕事とは人から使われるのではなくて、自分からすすんでやりたい、それもひとりで楽しみながらできることである。
カミさんとこんな話をした。
「このブログ、オレが死んだ後もしばらく置いといてもらおうかな。オレは原稿を書くことぐらいしかできないし、消してしまうとなにも残らないからな」
「消したら、もったいないよ。ブログはぜんぶコピーして、取っておこうよ。孫のKoちゃんが大きくなったときに、おじいちゃんはこんなことを考えていたんだよと読んでもらったらいいじゃない。そうしようよ」
縁起でもない夫婦の会話になったが、まだ2歳2か月の幼い孫がこのブログを読む様子を想像したことはなかった。「もったいないよ」となんて言われるとおもっていなかった。予期せぬお褒めの言葉をかけてもらったみたいで、たちまち気分がよくなって、ちょっとばかりやる気が出てきた。
そうかもな。Ko君がオレからのメッセージとして、読んでくれるかもしれないな。
いまの世の中、恥ずかしい大人たちが大手を振って歩いている。
トランプ、ネタニヤフ、プーチンの酷さは見たことがない。以前も触れたが、いますぐ隔離して、精神鑑定を受けさせたいほど狂っている。だが、本人たちは正しいことをやっていると頭から信じているらしい。自分への批判はいっさい受け付けない。そして、平気で人を殺す。Ko君、そんな時代があったんだよ。
いまごろこんなことを口にする人は見かけなくなったが、アメリカで起きたことは数年遅れで、日本でも起きるのは歴史の教えるところだ。格差、断絶の社会もそうである。アメリカファースト、日本ファースト。次はなんだろうか。
こうなることはわかっていたのに、ときの首相と一部の財界人や学者たちは日本の強みを弱みと断じて、この国をガタガタにぶっ壊す路線へと突っ込んで行った。「失われた10年」は20年になり、30年を過ぎ、まだ方向転換の兆しも見えない。
日本の政治家たちは、大衆に迎合して、選挙で嫌われることはいっさい口にしなくなった。消費税の廃止や減税なんて、まともに将来のことを考えたら、正気の沙汰とはおもえない。
無抵抗のまま、膨大な国の借金を背負わさせられる若い人たちに立ち上がってほしいとおもう。何も言わないと、何も変わらないのだから。
また最後は政治の話になった。でも、これも「反逆精神。若さの証拠」としておこう。
■室見川の河津桜は散ってしまった。きれいだったなぁ。
鏡の顔は、何かに似ている ― 2026年03月01日 17時48分
春、3月が始まった。夜明けから青空が広がって、日向(ひなた)にいたら、居眠りしたくなるほど暖かい。病気持ちの身からすれば、なにかいいことがありそうな春到来である。
しばらくブログを書かなかったので、心配していた友もいた。高校が一緒だったTa君から久しぶりに電話があった。
彼は10年以上も前にめずらしい胆管ガンを発症した。むずかしい手術も、その後の治療も乗り越えて、ぼくからすれば「ガンに打ち勝った目標」と仰ぐ友である。こちらの気持ちは言わずともわかっている。
そのTa君が今年の正月早々、膀胱ガンの手術をしたという。
「ホントかよ。大丈夫なのか」
いつもの定期健診の際に、たまたま肝臓あたりを中心にCT検査をやったら、医者がまったく想定していなかった膀胱でちいさな異変をキャッチしたという。
「運がよかったなぁ」
「うん。手術は内視鏡で簡単に終わったし、もう心配ないですよと言われたよ」
これだから、この病気は油断ができない。以前のように「不治の病」ではなくなったけれど、だれもが、いつかかっても不思議ではないポピュラーな病気になった。ぼく自身、発見から3年以上も付き合っていると、ガンではなくて、「慢性疾患」に向き合っているような気持ちになるときがある。
Ta君は酒を飲まない。飲まないのに、同期生たちとの飲み会には積極的に参加する。人に対して分け隔てがなく、言いたいことをはっきり言ってくれる。穏やかな人柄で、男女を問わず、いまも友だちが多い。
ぼくにはとてもマネができない。こんな高校時代の仲間から、からだを気遣ってくれる電話があるとうれしいものだ。
昨日は、横浜にいる後輩のKa君から、「福岡に行きます」のメールが届いた。大学で同じクラブだったA君との2年越しの計画をいよいよ実行に移すという。
Ka君はぼくと同じすい臓ガンで、抗がん剤治療中の身。
そんな体で大丈夫かなとおもう。
だが、彼らは彼らで、ぼくのことを「先輩、大丈夫かな」と心配している。
そして、クラブの部長だった「西高3人組」のひとり、Ha君は「あいつら、本当に大丈夫かなぁ」とみんなのことを心配している。そうそう、A君だって、心筋梗塞で、「あわや」の危機があったのだ。
こうやってブログ休止中のことを書いていたら、まわりは病人だらけではないか。春うららどころではない、なんだかすごいことになってきた。
横浜から届いたボールの扱いは、ただひとり元気なHa君にお任せすることにした。ぼくはなにもできない。ここはなんといっても元部長の出番である。彼がいてくれて、本当によかった。
そうか、ふたりで福岡に来るか。Ka君とは卒業以来だな。何十年ぶりかな。それにしてもオレの人相は変わったよな。会ったら、びっくりするだろうなぁ。
自分の顔を鏡で見る。頭にほとんど毛のない動物の顔が映っている。すっとぼけた表情は何かに似ている。
「おい。ダチョウがいるぞ」
カミさんにそう声をかけた。
■車で、室見川を上流へ1、2分。ぼくが勝手に名付けた「室見川のいちばん桜」(いちばん先に咲く桜)は、やっぱり河津桜だった。早くから咲くのは、この1本だけ。散歩している人たちが「満開ですね。きれいですねぇ」と言いながら集まって来る。
しばらくブログを書かなかったので、心配していた友もいた。高校が一緒だったTa君から久しぶりに電話があった。
彼は10年以上も前にめずらしい胆管ガンを発症した。むずかしい手術も、その後の治療も乗り越えて、ぼくからすれば「ガンに打ち勝った目標」と仰ぐ友である。こちらの気持ちは言わずともわかっている。
そのTa君が今年の正月早々、膀胱ガンの手術をしたという。
「ホントかよ。大丈夫なのか」
いつもの定期健診の際に、たまたま肝臓あたりを中心にCT検査をやったら、医者がまったく想定していなかった膀胱でちいさな異変をキャッチしたという。
「運がよかったなぁ」
「うん。手術は内視鏡で簡単に終わったし、もう心配ないですよと言われたよ」
これだから、この病気は油断ができない。以前のように「不治の病」ではなくなったけれど、だれもが、いつかかっても不思議ではないポピュラーな病気になった。ぼく自身、発見から3年以上も付き合っていると、ガンではなくて、「慢性疾患」に向き合っているような気持ちになるときがある。
Ta君は酒を飲まない。飲まないのに、同期生たちとの飲み会には積極的に参加する。人に対して分け隔てがなく、言いたいことをはっきり言ってくれる。穏やかな人柄で、男女を問わず、いまも友だちが多い。
ぼくにはとてもマネができない。こんな高校時代の仲間から、からだを気遣ってくれる電話があるとうれしいものだ。
昨日は、横浜にいる後輩のKa君から、「福岡に行きます」のメールが届いた。大学で同じクラブだったA君との2年越しの計画をいよいよ実行に移すという。
Ka君はぼくと同じすい臓ガンで、抗がん剤治療中の身。
そんな体で大丈夫かなとおもう。
だが、彼らは彼らで、ぼくのことを「先輩、大丈夫かな」と心配している。
そして、クラブの部長だった「西高3人組」のひとり、Ha君は「あいつら、本当に大丈夫かなぁ」とみんなのことを心配している。そうそう、A君だって、心筋梗塞で、「あわや」の危機があったのだ。
こうやってブログ休止中のことを書いていたら、まわりは病人だらけではないか。春うららどころではない、なんだかすごいことになってきた。
横浜から届いたボールの扱いは、ただひとり元気なHa君にお任せすることにした。ぼくはなにもできない。ここはなんといっても元部長の出番である。彼がいてくれて、本当によかった。
そうか、ふたりで福岡に来るか。Ka君とは卒業以来だな。何十年ぶりかな。それにしてもオレの人相は変わったよな。会ったら、びっくりするだろうなぁ。
自分の顔を鏡で見る。頭にほとんど毛のない動物の顔が映っている。すっとぼけた表情は何かに似ている。
「おい。ダチョウがいるぞ」
カミさんにそう声をかけた。
■車で、室見川を上流へ1、2分。ぼくが勝手に名付けた「室見川のいちばん桜」(いちばん先に咲く桜)は、やっぱり河津桜だった。早くから咲くのは、この1本だけ。散歩している人たちが「満開ですね。きれいですねぇ」と言いながら集まって来る。
すい臓がんの手術から丸3年が過ぎた ― 2026年02月23日 18時47分
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックの閉幕に合わせるかのように、この町に春いちばんが吹いた3連休も今日で終わり。
日の丸を背負った選手たちは、勝っても、負けても、よく泣いていた。テレビの前のぼくたち夫婦も、何度も、何度も、泣かされた。こんなに泣けて、泣いたオリンピックはなかった。これも、抗がん剤治療の副作用だろうか。いくらなんでもそれはないか。
連休中、ぼくもひとつの節目を迎えていた。
一昨日の2月21日は、3年前にすい臓がんの手術を受けた日。あれから丸3年が過ぎた。いまは4年目がスタートしたところである。
鏡を見ると、白っぽいうす毛がちょろちょろとしか残っていない、ハゲ頭の爺さんが映っている。眉毛も、まつ毛も、ヒゲもほとんどない。外出するときは帽子が必需品になった。
「そろそろ買い物に行こうか」
「ちょっと待って。いま眉毛を描いてあげるから」
「そう、じゃ、頼むわ」
こんな夫婦の会話にも抵抗感がなくなった。そして、今日、ぼくはとうとうある買い物をした。カミさんに付き合って、100円ショップのダイソーでそれを見つけた。店を出たところで、さっそく使ってみた。
長さ84センチの杖である。税別で150円した。
先日ホームセンターでチェックしたばかりだが、杖をついている同世代の男性を見たとたん、いますぐほしくなった。安物なので、ポキリと折れでもしたら大変だが、転倒防止の急場しのぎである。
初めて使ってみたが、案外、頼りになる。
「ここまで来たら、こんな姿を人に見られても、どうってことないな」
「そうよ。身を守る方が優先よ」
さぁ、術後4年目を完走する闘いが始まった。
現在の体調は上向きである。前回の抗がん剤の点滴から2週間が過ぎて、次は来週の月曜日。たっぷりあいだが空いているのがうれしい。からだがよろこんでいる。
また同病の後輩Ka君の勧めで、2週間前から野菜と果物をミキサーにかけた手作りのスムージーを飲み始めたのも、間違いなくプラスになっている。
ニンジン、ケール、キャベツ、セロリ、トマト、リンゴ、バナナなど、植物繊維もたっぷり摂取しているから、フレッシュな栄養をとりながら、毎日からだのなかを大掃除しているようなものだ。
歩いて行ける農産物の直売所では、「わけアリ」と断り書きのついた新鮮な野菜が格安で手に入る。この町にはこうした「地の利」もある。
今週で2月も終わる。すぐ3月が来る。たぶん来月もこんな調子だろう。そして、4月が来る。
長生きをするとは、こういうことだと知った。
日の丸を背負った選手たちは、勝っても、負けても、よく泣いていた。テレビの前のぼくたち夫婦も、何度も、何度も、泣かされた。こんなに泣けて、泣いたオリンピックはなかった。これも、抗がん剤治療の副作用だろうか。いくらなんでもそれはないか。
連休中、ぼくもひとつの節目を迎えていた。
一昨日の2月21日は、3年前にすい臓がんの手術を受けた日。あれから丸3年が過ぎた。いまは4年目がスタートしたところである。
鏡を見ると、白っぽいうす毛がちょろちょろとしか残っていない、ハゲ頭の爺さんが映っている。眉毛も、まつ毛も、ヒゲもほとんどない。外出するときは帽子が必需品になった。
「そろそろ買い物に行こうか」
「ちょっと待って。いま眉毛を描いてあげるから」
「そう、じゃ、頼むわ」
こんな夫婦の会話にも抵抗感がなくなった。そして、今日、ぼくはとうとうある買い物をした。カミさんに付き合って、100円ショップのダイソーでそれを見つけた。店を出たところで、さっそく使ってみた。
長さ84センチの杖である。税別で150円した。
先日ホームセンターでチェックしたばかりだが、杖をついている同世代の男性を見たとたん、いますぐほしくなった。安物なので、ポキリと折れでもしたら大変だが、転倒防止の急場しのぎである。
初めて使ってみたが、案外、頼りになる。
「ここまで来たら、こんな姿を人に見られても、どうってことないな」
「そうよ。身を守る方が優先よ」
さぁ、術後4年目を完走する闘いが始まった。
現在の体調は上向きである。前回の抗がん剤の点滴から2週間が過ぎて、次は来週の月曜日。たっぷりあいだが空いているのがうれしい。からだがよろこんでいる。
また同病の後輩Ka君の勧めで、2週間前から野菜と果物をミキサーにかけた手作りのスムージーを飲み始めたのも、間違いなくプラスになっている。
ニンジン、ケール、キャベツ、セロリ、トマト、リンゴ、バナナなど、植物繊維もたっぷり摂取しているから、フレッシュな栄養をとりながら、毎日からだのなかを大掃除しているようなものだ。
歩いて行ける農産物の直売所では、「わけアリ」と断り書きのついた新鮮な野菜が格安で手に入る。この町にはこうした「地の利」もある。
今週で2月も終わる。すぐ3月が来る。たぶん来月もこんな調子だろう。そして、4月が来る。
長生きをするとは、こういうことだと知った。
説明好きは嫌われる ― 2026年02月20日 21時36分
いままで見たこともない景色の国会が始まった。
衆議院の新しい勢力図は以下の通り。自民が追加公認を含めて316議席、これだけで定数の3分の2を超える。連立を組む日本維新は36議席。計352議席は定数の4分の3を占めている。
中道革新連合はたった49人になった。野党をぜんぶ足しても定数の4分の1しかいない。しかも、このちいさな勢力同士の関係は、相変わらず骨肉相食む主導権争いがお好きで、反自民でまとまる気配はない。日本の野党の歴史は、空中分解の残骸の山である。
大惨敗を喫した立憲民主は落ちぶれたわが家のことで手がいっぱいだ。当分のあいだ、高市首相に歯が立たず、気に入らないことがあっても、カヤの外から石ころでも投げるしかないか。
だが、この国の歴史を見ると、国難のときにヒーローが出て来るのはよくあることだった。たとえば土佐藩の坂本竜馬。
「風のひょう吉」がまたわけのわからないこと言い出した恰好だが、ぼくらの青春時代には「現代の竜馬」と呼ばれていた男がいた。べ平連の小田誠である。
若い人は知らないだろうな。あのころは個性丸だしの人物がいておもしろかった。彼が書いた本は当時の若者たちの必読書で、大ベストセラーだった。興味があったら、『何でも見てやろう』の一読をお薦めする。
政治の世界でも、勝ち組と負け組、格差、貧困のニオイが漂ってきた。そう感じるのは同じニオイのなかにいるぼくだけだろうか。
与党と野党の力の差は一目瞭然。数の勝負ではお話にもならない。では、最初の話に戻って、今度の国会でどんな景色が見えるだろうか。
小泉(純一郎)劇場のころから、政治家の話は「できるだけ短いフレーズで話す」ことが人気の条件になっている。国会議員に向かって、よく「説明責任を果たせ」というけれど、多くの人々が本当に詳しく、ていねいな説明をきちんと聞きたがっているのだろうか。それって、本当だろうか。
独断と偏見は覚悟のうえで、この際、はっきりさせておこう。
ぐだぐだした説明は聞きたくもないし、時間もかかるから嫌われるのだ。
ビジネスの本にも、「言いたいことは60秒で言いなさい」、なんてことが書いてある。
SNSでも、街頭演説でも、「短く、過激に、記憶に残す」話し方が効果的なのは実証済みなのだ。あの説明好きな石破茂のしゃべりではまどろっこしくて、せんぶの話を聞いてもらえないのだ。そういう時代なのだ。(ぼくはこの風潮に危機感を抱いている。それについては何度も触れた)
「消費税の財源の問題」も、「責任ある積極財政」も同じで、いちいちこまかく説明しない高市のやり方は、いまどきの選挙戦術として大正解なのである。
問題は、こんな調子で、高市がこの国を自分勝手に動かすとき。ぼくたちがよくわかっていないうちに、重大なことがするするっと決まってしまうかもしれない怖さがある。そんな景色が出て来なければいいのだが。
■暖かい日が続いている。ことし初めて、ベランダのオキザレスの花が咲いた。
衆議院の新しい勢力図は以下の通り。自民が追加公認を含めて316議席、これだけで定数の3分の2を超える。連立を組む日本維新は36議席。計352議席は定数の4分の3を占めている。
中道革新連合はたった49人になった。野党をぜんぶ足しても定数の4分の1しかいない。しかも、このちいさな勢力同士の関係は、相変わらず骨肉相食む主導権争いがお好きで、反自民でまとまる気配はない。日本の野党の歴史は、空中分解の残骸の山である。
大惨敗を喫した立憲民主は落ちぶれたわが家のことで手がいっぱいだ。当分のあいだ、高市首相に歯が立たず、気に入らないことがあっても、カヤの外から石ころでも投げるしかないか。
だが、この国の歴史を見ると、国難のときにヒーローが出て来るのはよくあることだった。たとえば土佐藩の坂本竜馬。
「風のひょう吉」がまたわけのわからないこと言い出した恰好だが、ぼくらの青春時代には「現代の竜馬」と呼ばれていた男がいた。べ平連の小田誠である。
若い人は知らないだろうな。あのころは個性丸だしの人物がいておもしろかった。彼が書いた本は当時の若者たちの必読書で、大ベストセラーだった。興味があったら、『何でも見てやろう』の一読をお薦めする。
政治の世界でも、勝ち組と負け組、格差、貧困のニオイが漂ってきた。そう感じるのは同じニオイのなかにいるぼくだけだろうか。
与党と野党の力の差は一目瞭然。数の勝負ではお話にもならない。では、最初の話に戻って、今度の国会でどんな景色が見えるだろうか。
小泉(純一郎)劇場のころから、政治家の話は「できるだけ短いフレーズで話す」ことが人気の条件になっている。国会議員に向かって、よく「説明責任を果たせ」というけれど、多くの人々が本当に詳しく、ていねいな説明をきちんと聞きたがっているのだろうか。それって、本当だろうか。
独断と偏見は覚悟のうえで、この際、はっきりさせておこう。
ぐだぐだした説明は聞きたくもないし、時間もかかるから嫌われるのだ。
ビジネスの本にも、「言いたいことは60秒で言いなさい」、なんてことが書いてある。
SNSでも、街頭演説でも、「短く、過激に、記憶に残す」話し方が効果的なのは実証済みなのだ。あの説明好きな石破茂のしゃべりではまどろっこしくて、せんぶの話を聞いてもらえないのだ。そういう時代なのだ。(ぼくはこの風潮に危機感を抱いている。それについては何度も触れた)
「消費税の財源の問題」も、「責任ある積極財政」も同じで、いちいちこまかく説明しない高市のやり方は、いまどきの選挙戦術として大正解なのである。
問題は、こんな調子で、高市がこの国を自分勝手に動かすとき。ぼくたちがよくわかっていないうちに、重大なことがするするっと決まってしまうかもしれない怖さがある。そんな景色が出て来なければいいのだが。
■暖かい日が続いている。ことし初めて、ベランダのオキザレスの花が咲いた。
子どもたちの絵に衝撃を受ける ― 2026年02月15日 19時06分
朝刊を広げて、しばらく目がはなせなかった。そこには思わず目をそらしたくなるような絵が並んでいた。暗い穴の底をのぞいたような、おどろおどろしくて、不気味な世界が広がっている。
この紙面はある読書感想画コンクールの発表の特集企画。約30万6,000点もの小中高生の絵の中から選ばれた栄誉ある作品たちである。
見開きページに載っている72点の絵のなかには明るくてたのしい作品もあるけれど、絵具の色も暗くて冷たいものが多い。構図やタッチもみなよく似ている。一見してわかるのは、いまの子どもたちは、こういう絵を描く子が大勢いるということだ。
指定された本を読んで、一生懸命に想像の翼を広げて描いた絵に対して、本来ならば誉めてあげるのが大人の立場というもの。それなのに、こんな印象を文字にするのは子どもたちの頭の上から冷水をぶっかけるみたいで、いまも少なからぬ抵抗がある。(紙面の発行は先月末。書くかどうか、ずっと迷っていた。)
ぼくはそれらの本を読んでいない。だが、主催者は子どもたちに薦めた本がこんなにも暗いイメージを与えるとは思っていなかったのではあるまいか。
ここで、気になっていたデータを思い出した。その記事の見出しはこうである。
小中高生自殺最多532人。2年連続「極めて深刻」 なお届かぬ子の叫び
昨年の小中高生の自殺者数(推定値)は532人もいて、統計のある1980年以降で最多になった。
この現実とこれらの絵を照らし合わせると、両者はどこか深いところで密接につながっているとおもう。専門家ではないので、あくまで直感だが、おそらく関連性はあるだろう。
大人と同じで、子どもたちの心のなかで、何が起きているのか、表面からはわからない。日本の将来を支える子どもたちの心は、はたして健康なのだろうか。
人を育てるには百年の計がいるという。子どもたちの心の問題に比べたら、高市首相や中道革新連合がどうのこうのという天下国家をめぐるテーマも一時的な関心事のように思えてきた。
こうしてブログを書くのは9日ぶり。ようやく今年初めからスタートした抗がん剤の副作用の谷間を乗り越えた。
ご心配をおかけしました。
この紙面はある読書感想画コンクールの発表の特集企画。約30万6,000点もの小中高生の絵の中から選ばれた栄誉ある作品たちである。
見開きページに載っている72点の絵のなかには明るくてたのしい作品もあるけれど、絵具の色も暗くて冷たいものが多い。構図やタッチもみなよく似ている。一見してわかるのは、いまの子どもたちは、こういう絵を描く子が大勢いるということだ。
指定された本を読んで、一生懸命に想像の翼を広げて描いた絵に対して、本来ならば誉めてあげるのが大人の立場というもの。それなのに、こんな印象を文字にするのは子どもたちの頭の上から冷水をぶっかけるみたいで、いまも少なからぬ抵抗がある。(紙面の発行は先月末。書くかどうか、ずっと迷っていた。)
ぼくはそれらの本を読んでいない。だが、主催者は子どもたちに薦めた本がこんなにも暗いイメージを与えるとは思っていなかったのではあるまいか。
ここで、気になっていたデータを思い出した。その記事の見出しはこうである。
小中高生自殺最多532人。2年連続「極めて深刻」 なお届かぬ子の叫び
昨年の小中高生の自殺者数(推定値)は532人もいて、統計のある1980年以降で最多になった。
この現実とこれらの絵を照らし合わせると、両者はどこか深いところで密接につながっているとおもう。専門家ではないので、あくまで直感だが、おそらく関連性はあるだろう。
大人と同じで、子どもたちの心のなかで、何が起きているのか、表面からはわからない。日本の将来を支える子どもたちの心は、はたして健康なのだろうか。
人を育てるには百年の計がいるという。子どもたちの心の問題に比べたら、高市首相や中道革新連合がどうのこうのという天下国家をめぐるテーマも一時的な関心事のように思えてきた。
こうしてブログを書くのは9日ぶり。ようやく今年初めからスタートした抗がん剤の副作用の谷間を乗り越えた。
ご心配をおかけしました。
自民圧勝。凄み増す、高市の笑顔 ― 2026年02月09日 18時38分
今回の衆院選、最初から変な選挙だなぁ、と思っていたが、結果はそんな程度ではなかった。各メディアの大方の予想は「自民、過半数が焦点」。それが「高市自民3分の2 歴史的圧勝」に。
問題発言が止まらない高市早苗がこんなに人気が高いとは思わなかった。いや、問題発言と思わない人が全国各地にこんなに大勢いるとは思わなかった。
まぁ、上手くやってくれればいいのだが、あの人、どうも心配なところがある。
ちょっと思い出してほしい。
「(奈良の)鹿を足で蹴上げるとんでもない人がいます。殴って怖がらせる人がいます。外国から観光に来て、日本人が大切にしているものをわざと痛めつけようとする人がいるんだとすれば、皆さん、何かが行き過ぎている」
これは彼女の演説である。では、その話は本当なのかといえば、真偽不明の説明で終わり。
台湾に関する有事発言も、「円安でホクホク」も、本人がそう思っているから口から出たのだ。例によって、すぐ後から訂正したけれど、円安は物価を上げるので、食料品の消費税をゼロにしても、物価上昇に追いつかないのはわかりきったことではないか。しかも、消費税ゼロは来年度の話なのだ。
次に今回の選挙では、戦いはリーダーによって決まる、という点も特徴的だった。
以前にも触れたが、ぼくは選挙の後の高市首相のことが気になる。なにしろ3分の2も議席があるのだ。極端に言えば、なんでもできる。
元立憲民主党のベテラン勢はほとんど討ち死にした。日本維新はすり寄っている。国民民主は政敵ではない。つまり、怖いものはなくなった。
高市にとっては、自分でつかんだ千載一遇の大チャンス。もはや昨日までの党内基盤の脆弱な彼女ではない。おそらくこの勢いで、尊敬する安倍元首相がやりたくてもできなかったことをやる。自分の政治信条に従って、やりたいことをやります、というときが来る。親しげな笑顔の裏側で、いよいよ政治家としての凄みが増すだろう。
先の大戦に対しても、「自分は戦争を体験していないので、責任を感じていない」と公言している。ぼくが取材していたころの自民党の政治家ではない。
あんなことを言っているのに、こんなに熱烈に応援して大丈夫かなぁ。
個人的には、「みらい」の大健闘はうれしかった。永田町は理想通りにはいかない、世間一般の常識が通じないところだが、少数精鋭で新しい風を送ってほしい。
今日は抗がん剤点滴の日だった。病気持ちのこちらは神経に触ることは、あまり考えない方がからだにいい。ということで、このへんで。
問題発言が止まらない高市早苗がこんなに人気が高いとは思わなかった。いや、問題発言と思わない人が全国各地にこんなに大勢いるとは思わなかった。
まぁ、上手くやってくれればいいのだが、あの人、どうも心配なところがある。
ちょっと思い出してほしい。
「(奈良の)鹿を足で蹴上げるとんでもない人がいます。殴って怖がらせる人がいます。外国から観光に来て、日本人が大切にしているものをわざと痛めつけようとする人がいるんだとすれば、皆さん、何かが行き過ぎている」
これは彼女の演説である。では、その話は本当なのかといえば、真偽不明の説明で終わり。
台湾に関する有事発言も、「円安でホクホク」も、本人がそう思っているから口から出たのだ。例によって、すぐ後から訂正したけれど、円安は物価を上げるので、食料品の消費税をゼロにしても、物価上昇に追いつかないのはわかりきったことではないか。しかも、消費税ゼロは来年度の話なのだ。
次に今回の選挙では、戦いはリーダーによって決まる、という点も特徴的だった。
以前にも触れたが、ぼくは選挙の後の高市首相のことが気になる。なにしろ3分の2も議席があるのだ。極端に言えば、なんでもできる。
元立憲民主党のベテラン勢はほとんど討ち死にした。日本維新はすり寄っている。国民民主は政敵ではない。つまり、怖いものはなくなった。
高市にとっては、自分でつかんだ千載一遇の大チャンス。もはや昨日までの党内基盤の脆弱な彼女ではない。おそらくこの勢いで、尊敬する安倍元首相がやりたくてもできなかったことをやる。自分の政治信条に従って、やりたいことをやります、というときが来る。親しげな笑顔の裏側で、いよいよ政治家としての凄みが増すだろう。
先の大戦に対しても、「自分は戦争を体験していないので、責任を感じていない」と公言している。ぼくが取材していたころの自民党の政治家ではない。
あんなことを言っているのに、こんなに熱烈に応援して大丈夫かなぁ。
個人的には、「みらい」の大健闘はうれしかった。永田町は理想通りにはいかない、世間一般の常識が通じないところだが、少数精鋭で新しい風を送ってほしい。
今日は抗がん剤点滴の日だった。病気持ちのこちらは神経に触ることは、あまり考えない方がからだにいい。ということで、このへんで。
期日前投票の無言の怒り ― 2026年02月06日 15時28分
11時すぎ、カミさんと一緒に衆院戦の期日前投票に行ってきた。会場は近くのショッピングモールの1階。すでに数十人が並んでいた。その7割方は年寄りである。
相変わらず頭と足元がふらつくので、いつ倒れるか不安で、いっぷんも立っていられない。左隣のカミさんの腕をつかんで、じっと耐える。前列の左の白髪頭の男性は杖にすがっている。ぼくの前の小柄な男性は列から一歩はなれて、右手で壁を押さえていた。
ここのモールはふだんから人出が多い。それでも今日は特別で、こちらの隊列に向かって、よたよた歩いてくる年寄りたちが続く。
もちろん、足腰のしっかりした老人もいるけれど、「この人たちは、将来の日本に危機感を持っているんだろうな」とおもった。
そうおもうと一年中でいちばんの大雪で、悪天候が予想されるときに、自分の都合で選挙を仕掛けた高市早苗にムラムラと怒りがわいてきた。
ここにいる人たちも、明後日の8日の投票日は大雪の恐れがあるから、それを避けるためにわざわざやって来た人もかなりの数にのぼるはずである。
カミさんの郷の新潟の山間地や日本海側の地域では大雪で投票どころではなく、死者も続出しているのだ。さらに投票用紙だって、間に合うかどうかの地域もあるという。国民の権利を奪いかねない、こんな所業は為政者のやることか。
重大な国事の前では、そんな個人的な問題はちっぽけなことではないか、という声も聞こえてきそうだ。しかし、この国が直面している課題は、人々が孤立を深めて、断絶した社会から、みんなで支え合う社会を取り戻すことである。個人的な問題こそ、目を向けてほしい。本当に困っている人たちに貴重な税金をつかうのが本筋だろう。
高市首相の人気は各種の世論調査で実証ずみ。小泉も、安倍もそうだった。だが、今日の格差・貧困の状況を招いたのはほかならぬ自民党である。税金を隠して自分の懐に入れた、あの裏金問題も自民党が勝てば、高市はその防止策を真剣に検討しないまま、ほぼ100%、「これにて一件落着」にするだろう。
ぼくは短い記者時代に自民党の政治家と親しくなって、ずいぶん育ててもらった恩義を忘れてはいない。その人たちはいまの政治に強い危機感を持っているに違いないのだ。
中国の懐に飛び込んでいく外交のプロはどこにいるのか。消費税のことが騒がれているけれど、肝心の党税調のプロも除外された。耳の痛いことを言う日本学術会議の学者たちも追いはらわれた。
日本の代表的な知識層をブレーンにした「教養の大平」、「経済の福田、宮沢」、「党税調のドン・山中(貞則)」もずいぶん前の話になった。
決して懐古趣味で書いているのではない。足元ふらふらで、期日前の投票の列に並んでいた先輩や同輩諸氏たちも、きっとうなずいてくれるだろう。
■右上のベランダの柵のあいだに小さく写っている白い服が有名な「草取りばあさん」。野草のスミレや樹木がかわいそうだからと言って、ていねいに土の中の小石まで取りのぞいている。
相変わらず頭と足元がふらつくので、いつ倒れるか不安で、いっぷんも立っていられない。左隣のカミさんの腕をつかんで、じっと耐える。前列の左の白髪頭の男性は杖にすがっている。ぼくの前の小柄な男性は列から一歩はなれて、右手で壁を押さえていた。
ここのモールはふだんから人出が多い。それでも今日は特別で、こちらの隊列に向かって、よたよた歩いてくる年寄りたちが続く。
もちろん、足腰のしっかりした老人もいるけれど、「この人たちは、将来の日本に危機感を持っているんだろうな」とおもった。
そうおもうと一年中でいちばんの大雪で、悪天候が予想されるときに、自分の都合で選挙を仕掛けた高市早苗にムラムラと怒りがわいてきた。
ここにいる人たちも、明後日の8日の投票日は大雪の恐れがあるから、それを避けるためにわざわざやって来た人もかなりの数にのぼるはずである。
カミさんの郷の新潟の山間地や日本海側の地域では大雪で投票どころではなく、死者も続出しているのだ。さらに投票用紙だって、間に合うかどうかの地域もあるという。国民の権利を奪いかねない、こんな所業は為政者のやることか。
重大な国事の前では、そんな個人的な問題はちっぽけなことではないか、という声も聞こえてきそうだ。しかし、この国が直面している課題は、人々が孤立を深めて、断絶した社会から、みんなで支え合う社会を取り戻すことである。個人的な問題こそ、目を向けてほしい。本当に困っている人たちに貴重な税金をつかうのが本筋だろう。
高市首相の人気は各種の世論調査で実証ずみ。小泉も、安倍もそうだった。だが、今日の格差・貧困の状況を招いたのはほかならぬ自民党である。税金を隠して自分の懐に入れた、あの裏金問題も自民党が勝てば、高市はその防止策を真剣に検討しないまま、ほぼ100%、「これにて一件落着」にするだろう。
ぼくは短い記者時代に自民党の政治家と親しくなって、ずいぶん育ててもらった恩義を忘れてはいない。その人たちはいまの政治に強い危機感を持っているに違いないのだ。
中国の懐に飛び込んでいく外交のプロはどこにいるのか。消費税のことが騒がれているけれど、肝心の党税調のプロも除外された。耳の痛いことを言う日本学術会議の学者たちも追いはらわれた。
日本の代表的な知識層をブレーンにした「教養の大平」、「経済の福田、宮沢」、「党税調のドン・山中(貞則)」もずいぶん前の話になった。
決して懐古趣味で書いているのではない。足元ふらふらで、期日前の投票の列に並んでいた先輩や同輩諸氏たちも、きっとうなずいてくれるだろう。
■右上のベランダの柵のあいだに小さく写っている白い服が有名な「草取りばあさん」。野草のスミレや樹木がかわいそうだからと言って、ていねいに土の中の小石まで取りのぞいている。
銀座・木村屋のあんぱんをいただく ― 2026年02月04日 17時32分
立春。朝から快晴。午後から雲が出る。
9時すぎ、横浜市にいるもうひとりの後輩君・Ka君から小包が届いた。彼はぼくと同じ病気持ちで、第2段目の抗がん剤治療が始まったばかり。こんなときにわざわざ気を遣って送ってくれたのは、銀座・木村屋の名物「酒種あんぱん」である。
かわいい、この有名なあんぱんを手にするのはいつ以来だろうか。小倉、桜、いちじく、あまおう苺、屋久島たんかんの5種類がはいっている。
Ka君も奥さんに感謝している。「先輩も同じでしょ。ですから、これは奥さんへのプレゼントです」。事前にやりとりしたメールには、そう書いてあった。
田舎者のぼくにとって、銀座・木村屋は敷居の高い高級店のイメージがあった。たかが、あんぱんとはいえ、超一等地の「銀座」と聞くだけで、初めて木村屋の店内に足を踏み入れたときには、「東京デビュー」をしたような気持ちになったものだ。あのころのぼくは「初(うぶ)」でした。
それにしても、後輩君たちには何もしてこなかったのに、こんなによくしてくれる。うれしいやら、情けないやらで、申しわけなくおもう。「早く元気になって、もっと書いて」と言っている。本当にありがたい友である。
東京デビューといえば、上京してまもなく、『墨東綺譚』、『つゆのあとさき』、『うでくらべ』、『おかめ笹』など、永井荷風の世界に魅せられて、深川から佃島、月島を歩きまわったことがある。
門前仲町の駅前の安い大衆酒場で、江戸前でとれたという名物のアサリの酒蒸しを注文して、ガリッ!と砂に当たったのもそのころだった。
「学生かい?」
白木のカウンター席にいた隣のおっさんから訊かれた。
「はい」
「今日はどこから来たんだい?」
「大学のある早稲田です」
「へぇー、山の手じゃないか。またえらく遠いところから来たもんだ」
身を乗りだしてきたのは、そのお隣りの席で一献やっている赤い顔をした爺さん。
「出身はどこだい?」
「九州の小倉です」
「ひゃーっ、九州か。そりゃあ、遠いなぁ。よく出て来たなぁ。ほら、一杯やんな」
ときは1970年。そこだけ時間が止まっているような会話を憶えている。
あれから半世紀あまりが過ぎた。
■選挙終盤、「チーム未来」の可能性
各メディアの選挙区分析では、どうやら自民党が過半数を制する勢いという。
ぼくが注目している「チーム未来」は消費税の減税反対を明確にして、このあたりでは話題にも上らない。だが、AIのデジタル技術を使いこなして、新しい時代を切り拓く可能性のある若い人たちが出て来た。きっと彼らのチカラが必要とされるときは来るとおもう。
「チーム未来」の所属国会議員は、先の参議院選で比例代表から当選した党首の安野貴博(たかひろ)ひとりだけ。応援したくても、わが選挙区には候補者がいない。
今回投票する予定の候補者は「次善の策」になる。こんな選挙が増えてきた。
9時すぎ、横浜市にいるもうひとりの後輩君・Ka君から小包が届いた。彼はぼくと同じ病気持ちで、第2段目の抗がん剤治療が始まったばかり。こんなときにわざわざ気を遣って送ってくれたのは、銀座・木村屋の名物「酒種あんぱん」である。
かわいい、この有名なあんぱんを手にするのはいつ以来だろうか。小倉、桜、いちじく、あまおう苺、屋久島たんかんの5種類がはいっている。
Ka君も奥さんに感謝している。「先輩も同じでしょ。ですから、これは奥さんへのプレゼントです」。事前にやりとりしたメールには、そう書いてあった。
田舎者のぼくにとって、銀座・木村屋は敷居の高い高級店のイメージがあった。たかが、あんぱんとはいえ、超一等地の「銀座」と聞くだけで、初めて木村屋の店内に足を踏み入れたときには、「東京デビュー」をしたような気持ちになったものだ。あのころのぼくは「初(うぶ)」でした。
それにしても、後輩君たちには何もしてこなかったのに、こんなによくしてくれる。うれしいやら、情けないやらで、申しわけなくおもう。「早く元気になって、もっと書いて」と言っている。本当にありがたい友である。
東京デビューといえば、上京してまもなく、『墨東綺譚』、『つゆのあとさき』、『うでくらべ』、『おかめ笹』など、永井荷風の世界に魅せられて、深川から佃島、月島を歩きまわったことがある。
門前仲町の駅前の安い大衆酒場で、江戸前でとれたという名物のアサリの酒蒸しを注文して、ガリッ!と砂に当たったのもそのころだった。
「学生かい?」
白木のカウンター席にいた隣のおっさんから訊かれた。
「はい」
「今日はどこから来たんだい?」
「大学のある早稲田です」
「へぇー、山の手じゃないか。またえらく遠いところから来たもんだ」
身を乗りだしてきたのは、そのお隣りの席で一献やっている赤い顔をした爺さん。
「出身はどこだい?」
「九州の小倉です」
「ひゃーっ、九州か。そりゃあ、遠いなぁ。よく出て来たなぁ。ほら、一杯やんな」
ときは1970年。そこだけ時間が止まっているような会話を憶えている。
あれから半世紀あまりが過ぎた。
■選挙終盤、「チーム未来」の可能性
各メディアの選挙区分析では、どうやら自民党が過半数を制する勢いという。
ぼくが注目している「チーム未来」は消費税の減税反対を明確にして、このあたりでは話題にも上らない。だが、AIのデジタル技術を使いこなして、新しい時代を切り拓く可能性のある若い人たちが出て来た。きっと彼らのチカラが必要とされるときは来るとおもう。
「チーム未来」の所属国会議員は、先の参議院選で比例代表から当選した党首の安野貴博(たかひろ)ひとりだけ。応援したくても、わが選挙区には候補者がいない。
今回投票する予定の候補者は「次善の策」になる。こんな選挙が増えてきた。
江ノ電のカレンダーでおもうこと ― 2026年01月31日 15時36分
1月も終わりか。だが、個人的には「終わり」という表現では言い尽くせないものがある。「1月を乗り越えた」。あるいは「乗り切った」。そんな気持ちである。
9時ごろ、楽しみにしていた宅配便が届いた。横浜にいる後輩のA君が送ってくれたもので、事前の連絡から円筒形をした小包の中身はわかっている。
包装紙をほどいて出てきたのは、今年の江ノ電のカレンダー。予想していた写真ではなく、風景画だった。A君は毎年まとめ買いして、兄や友人たちに送っているという。そのお裾分けがわが家にもやってきたというわけだ。
さっそく北の部屋に飾った。いまにも電車の音が聴こえてきそうだ。大きなサイズだから見栄えがする。いい絵だなぁ。これ1枚で部屋の雰囲気がガラリと変わった。
A君は高校生のとき、この江ノ電で鎌倉の高校に通っていたという。鎌倉、江ノ電か。しゃれているなぁ。
それに引き換え、この劣等生は、「ポーッ! ガシュッ! ガシュッ! ガシュッ! ガシュ、ガジュ、ガシュ」の蒸気機関車だった。かわいいC11が焦げ茶色の短い客車を引っ張っていた。
もちろん通勤、通学の時間帯には普通電車も、ディーゼル列車も、電気機関車がけん引する列車もあった。だが、祖父も父親も国鉄職員だったぼくはローカル線を走るC11が好きだった。
高校がある駅はたったひとつ先。途中に紫川を渡る鉄橋がある。客車の入口はいつも満員で、外に出るドアは開けたまま。両方の足をドアの外のせまい踏み台に乗せ、右手で手すりの金棒をがっちり掴み、学帽を深くかぶって、風を受けながら数十メートルの鉄橋を通りすぎていく。
ガタン、ガタン、ガタン、ガタン、ガタン。
落っこちたら命にかかわる。そんなスリルを味わっていた。実際に鉄橋を渡ったところで振り落とされて、大けがした同級生もいた。いまのご時勢では、とんでもない社会問題になるだろう。
列車通学にはほかの楽しみもあった。なんたって到着時刻、発車時刻が正確無比の国鉄である。バスとは違って、行きも、帰りも決まった時刻に、決まった生徒が駅のホームにやって来る。
同級生のなかに、私立の女子高生にイカレタやつがいた。彼女がいつも乗る電車に間に合うために、彼は校門を出てから最初は急ぎ足。だんだん速くなって、最後はダッシュするのだった。だいたいこの手合いは片思いに終わる。
A君はどうだったのかなぁ。
とうとう今月締め切りのエッセイは書かず仕舞いだった。でも、すぐ次がある。いまからでも少しやってみるか。
9時ごろ、楽しみにしていた宅配便が届いた。横浜にいる後輩のA君が送ってくれたもので、事前の連絡から円筒形をした小包の中身はわかっている。
包装紙をほどいて出てきたのは、今年の江ノ電のカレンダー。予想していた写真ではなく、風景画だった。A君は毎年まとめ買いして、兄や友人たちに送っているという。そのお裾分けがわが家にもやってきたというわけだ。
さっそく北の部屋に飾った。いまにも電車の音が聴こえてきそうだ。大きなサイズだから見栄えがする。いい絵だなぁ。これ1枚で部屋の雰囲気がガラリと変わった。
A君は高校生のとき、この江ノ電で鎌倉の高校に通っていたという。鎌倉、江ノ電か。しゃれているなぁ。
それに引き換え、この劣等生は、「ポーッ! ガシュッ! ガシュッ! ガシュッ! ガシュ、ガジュ、ガシュ」の蒸気機関車だった。かわいいC11が焦げ茶色の短い客車を引っ張っていた。
もちろん通勤、通学の時間帯には普通電車も、ディーゼル列車も、電気機関車がけん引する列車もあった。だが、祖父も父親も国鉄職員だったぼくはローカル線を走るC11が好きだった。
高校がある駅はたったひとつ先。途中に紫川を渡る鉄橋がある。客車の入口はいつも満員で、外に出るドアは開けたまま。両方の足をドアの外のせまい踏み台に乗せ、右手で手すりの金棒をがっちり掴み、学帽を深くかぶって、風を受けながら数十メートルの鉄橋を通りすぎていく。
ガタン、ガタン、ガタン、ガタン、ガタン。
落っこちたら命にかかわる。そんなスリルを味わっていた。実際に鉄橋を渡ったところで振り落とされて、大けがした同級生もいた。いまのご時勢では、とんでもない社会問題になるだろう。
列車通学にはほかの楽しみもあった。なんたって到着時刻、発車時刻が正確無比の国鉄である。バスとは違って、行きも、帰りも決まった時刻に、決まった生徒が駅のホームにやって来る。
同級生のなかに、私立の女子高生にイカレタやつがいた。彼女がいつも乗る電車に間に合うために、彼は校門を出てから最初は急ぎ足。だんだん速くなって、最後はダッシュするのだった。だいたいこの手合いは片思いに終わる。
A君はどうだったのかなぁ。
とうとう今月締め切りのエッセイは書かず仕舞いだった。でも、すぐ次がある。いまからでも少しやってみるか。
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