室見川の河畔に立って2021年01月15日 15時01分

 昼どき前、ことし初めて室見川の河畔を歩いた。サイクリング、ジョギング、ウォーキングが楽しめる遊歩道が整備されていて、川面は冬の渡り鳥でにぎやかである。
 広々とした川辺に出ると、すぐ目の前でコガモたちがいちめんの枯草の中から緑色の草を見つけて食べていた。まるいお尻を左右にふりながら、ヨチヨチと歩く姿がなんともかわいい。こんな小さなからだで、よくぞここまで飛んできてくれた。
 このあたりは下流域で、川幅は七十メートルほどもあり、両岸の間には葦やハンノキの繁った中州がある。茶色に枯れた葦のやぶの水ぎわには、これも渡り鳥のバンのつがいがいた。
 室見川には年中、野鳥がやってくる。今日は久しぶりの暖かい日で、コガモ、マガモ、バン、ユリカモメ、カイツブリ、セキレイ、コサギ、アオサギたちに会った。半透明の水の中には、五十センチほどの鯉が数匹、のんびりと泳いでいた。
 川の流れを見ていると、宮崎、鹿児島、大分の小さな町や村で過ごしたころを思い出す。
 ウナギ、アユ、ハヤ、メダカ、ドジョウ、ジャモンキン(鹿児島弁)、ドンコ、手長エビ、サワガニ、ツガニ、そのほかの名も知らぬ川エビや小魚たち。トンボの幼虫のヤゴ、ゲンゴロウ、水面をくるくるまわる黒い光の粒のようなミズスマシ。そうだ、ミズスマシもいた。
 子どもころ、みんなこの手でつかまえた。
 あのころ遊んでいた川は、川底を転がる小石も、魚たちの影もはっきり見えた。水面は鏡のように空と地上の風景を映しながら、すべるように流れていた。
 もしも一度だけ、どんな奇跡でもかなえられるとしたら、ぼくは世界中の海や川、湖の水を大昔のように、どこまでも透きとおったきれいな水に戻して、子どもたちに見せてあげたい。

■室見川は福岡市の西部を流れて、博多湾に注ぐ二級河川です。

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