カササギの巣作りに祝福を2025年04月27日 18時13分

 また来た。ほら、また来た。
 カササギがわが家のベランダの目の前を、細い枝をくわえて横切っていく。すぐあとからもう一羽が同じコースを飛んでいく。黒と白とのおしゃれなツートンカラーのややゆっくりめの飛翔は美しく、なかなかの見ものである。
 カササギにも繁殖の時期がやってきた。何度も行き来するから、ぼくたち夫婦も、ほかのカササギと彼らを見分けわれるようになった。
 だが、悲しいかな、このカップルには不幸が待っている。それを彼らはまったく気づいていない。
 なにしろ巣をかけた場所が悪すぎる。
 写真を見れば、一目瞭然だろう。そこはぼくたちの部屋がある団地の棟の壁で、ほんの1週間前、屋上の防水工事のために取り付けられた足場である。
 つまり、まもなく撤去されるというわけ。当然のことながら、仲のよいカササギのカップルが1本1本、小枝を集めて、一生懸命に作った愛の巣も無残に取り除かれる運命にある。そのことを彼らは知らない。
 実はここに至るまで、このカップルにはもうひとつのドラマがあった。
 4日前の朝のこと、2羽のカササギはここから30メートルほど離れている電柱の上部で巣作りをはじめた。たまたまぼくはそれを見つけた。
 カササギ夫婦はよく働いていた。細長い小枝を何度も運んでは、くちばしで上手に積み重ねて、夕方までにはなんとか巣の形ができた。
 しかし、真下は車が行き交う道路の端で、子育てには危険がいっぱいのところ。また電柱の巣作りは、電力会社から撤去されるのは必然で、「あんなところに巣を作って」と他人ごとながら、気をもんでいたのである。
 ところが翌日のこと、なぜかカササギはその家を見捨てたのだった。せっかくこしらえた住まいを解体して、いつの間にか、ぜんぶの建材をどこかへ運んでしまった。
 カササギがこんなことをするなんて、初めて知った。さすがはカラスの仲間だけのことはある、きっと頭がいいのだろうとおもった。
 どこへ転居したのか、気になって、ぼくは室見川の桜並木まで、あの2羽のカササギを探し歩いた。だが、遠くから声は聞こえても、どこにも姿は見えず。
 そして、今日の昼過ぎ、カミさんがわが家のすぐそばに、彼らの新居を発見したという次第。
「卵を産んでいなければいいけど。かわいそうだね」
「巣のある足場もいいし、ネットで守られているから安全で、子育てには最高の場所なんたけどなあ。いいところを見つけたと最初の巣を壊して、ここに移転したのだろうに。また最初からやり直しだね」
 新緑がきらめくなか、このカップルの幸せを願ずにはいられない。

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