花壇に残されたナゾ2024年05月27日 18時49分

 はて、どうしたものやら。3日前からぼくたち夫婦は少々困惑している。
「事件」が起きた時刻は不明。やった人も不明。ただ「証拠」だけが残っている。
 現場はぼくたちが面倒をみている団地の花壇である。事件が起きた前日は、午前中に花の盛りを過ぎたノースポールやパンジーを抜きとって、硬くなった土を耕して、肥料をほどこし、水は3階の自宅からバケツで運んで、これから咲く夏秋の花のトレニア、サルビア、ニチニチソウの苗を植えた。最後の水やりまで1時間ほどかかった。花壇の維持管理もけっこうな出費と運動になる。
 あちこちにわざと空けているスペースは、やがて植えつけた花々の枝が伸びて、いい案配にすき間を埋めてくれるはず。ぜんたいの仕上がりをみて、やれやれ、ひと仕事終わった、とおもっていた。
 ところがである。翌朝、花の様子を見に行ったら、異変が起きていた。ところどころ空けていたスペースに、黒いビニール製の小さなポットが7個も置かれていたのだ。ポットからは細い緑色の茎と葉っぱがひょろひょろと20センチほど伸びて、先の方は弱々しくおじぎをしている。
 はぁー、なに、これ? どうしてこんなものを置いているの? どういう意味?
 カミさんとしばらく思案に暮れて、こうやって黙って花の苗を置いて行った人の心理をいろんな角度から推理した。
 少なくとも、ぼくらがこの花壇の面倒をみていることを知っている人だろう。自分も加わりたくて、どうぞこの苗を植えてくださいということかな。たぶん、悪気はなくて、善意からだと受けとめておこう。
 その半面で、困るよなぁ、一方的にこんなことされても。自分はポンと置くだけで、あとはこっちで面倒をみてね、ということか。ここは団地の共有花壇だから、やりたければ自分で植えて、自分で育てればいいのに。
 そんな被害者的な気持ちがどうしても湧いてくる。とにかく所有者がわからないから、勝手なことはしないで、このままにしておこう。そうすれば持って帰るかもしれない。
 ということで、ひとまず揺れるこころを落ち着かせた。
 翌日。また事件が起きた。
 黒いポットは無くなるどころか、逆に16個まで増えていた。手に取ってよくよくみたら、どうやら自分でタネから育てて、ポットに移植したことがわかった。うーん、店から買ってきたのではなくて、あまった苗だったのか。
 花壇の花を楽しみにしていて、好意的な声をかけてくる人は何人もいる。この件で、立ち話に加わる人や電話をくれた人もいた。
 その合議の結論は、このまま触らずにおいた方がいい、ということになった。
「だって植えるところないでしょ。それに植えたら、またこれからもきっと持って来るわよ」
「植えるんなら、自分でやらんとねぇ。だれが持ってきたか、だいたいの見当はついとるばってん、オレも気をつけて(花壇を)見とこう」
 よかった、ぼくたちの気持ちをわかってくれる味方がいてくれて。
 それでも事情を知らずに花壇のそばを通る人は、「なんで、(いつも花壇の世話している)あの夫婦は、この花の苗をこのままほったらかしにしておくのだろう」、「このままでは枯れてしまうじゃないの。はやく植えてあげればいいのに」といぶかしくおもうに決まっている。
 いよいよどうしようもなくなったら、どこか別の場所にでも持って行くしかないのかなぁ。
 よろこんでもらえるのを励みに、ボランティアでやっているのに、こんな居心地の悪い目にあうとは夢にもおもわなかった。
 ぼくたち夫婦は、事件を起こしてくれた正体不明のその人に向かって、「お気持ちだけ、ありがたくいただきます」と、1日でも、1時間でも早く言いたい。
 天下国家の大事に比べれば、ごくたわいもない話だが、皆さんならどうするだろうか。

■買い物帰りに畑の横の道を歩いていたら、カモが卵を抱いているのを見つけた。5メートルほどまで近づいて、スマホで撮影してもじっとしている。昨夜から未明にかけてのはげしい雨に大丈夫だろうかと心配したが、今日も同じところに、同じ姿勢のままでいた。

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