本の山くずしを始める ― 2024年06月24日 16時49分

4月中には片づけてしまおう。
そう誓っただけで、ずるずる先延ばしして、はや半年が過ぎようとしている。
こいつはまずい。ぼやぼやしているうちに、また月々の借り賃の1万円あまりが出ていく。さすがになまけ癖の尻に火がついて、自宅から歩いて4分の貸倉庫の整理に再チャレンジした。
ぎっしり詰め込んでいたときに比べれば、ぜんたいの3、4割は片付けたが、残っている荷物のほとんどは、ぼくが仕事場をたたんだときに持ち込んだものである。自分の責任で倉庫を空っぽにして、契約解除までやるしかない。
やっかいな荷物の象徴がいちばん奥の方に押し込んである本の山で、中型サイズの段ボール箱が15個も積み重なっている。なかには単行本や文庫本、資料などを詰め込んでいるから、どれもこれもがずっしり重い。へたに持ち上げると腰をやられてしまう。
大事な書物をこんなところに置き去りにしたときから、この日がくるのはわかっていた。どうしたものかとずっと気になっていた。まだ処分の仕方に迷っているけれど、ゴミに出さないことだけは決めている。
薄っぺらな油紙のようになったガムテープをはいで、10数年ぶりに箱の蓋を開ける。
けっして勉強熱心な方ではなかったし、読書家の人が見たら失笑するだろうが、よくもまぁ、カネもないのに、こんなにいろんな本を買って読んだものだ。
いちばん上にある分厚いマーケティングの本を手にとって、ぱらぱらとめくったら、黒い鉛筆の傍線がいっぱい引いてあった。そこにはそのときのぼくがいた。
改めて手にすると、評判の割にはたいしたことがなかった本もある。著者の名前にひかれて購入した本も出てきた。定説になっている内容を、流行り言葉のカタカナで化粧直ししただけのビジネス書も目につく。
反対に書店の本棚の隅っこに置かれていても、著者が精魂傾けて書いたことが伝わってくる希少な本も見つかった。友だちのデビュー作も、ぼくが書いた本もあった。
自宅に持ち帰る本は100冊ていどと決めている。どの本を手元に残すかの判断基準は、自分のこころと直感に従うことにした。おおまかに分けて、関心のある分野で、色あせない資料としての価値があるもの。また読みたくなるものの2点に絞った。
「この3冊で1万円も使ったのか…」。のっけからショックを受けて、それからはいっさい価格を見ないことにした。
戦略が決まれば、生産性が10倍アップするのは経営の本に書いてある通りである。箱を開けて、手元に残す本、処分する本を仕分けするのに3分もかからない。そして、この3分間はこれからの自分がやりたいことを一つひとつ確かめる時間でもあった。
今日の作業は段ボール箱を引っ張り出すだけで大汗をかいたので、午前中の1時間で止めた。なにごとも一瀉千里にやるとついつい頭も手先も雑になって、大事なものまで取りこぼしてしまうことがよくある。ここはひと息おいて、いったん腰を落としてから再開することにした。
「ほら、またこれだ」
そう決めたとたんに、もうひとりのぼくの声が聞こえた。言わんとしている次のセリフもわかっている。
「そうやって、いつもさぼるんだから」
■昨日は、午後からカミさんと一緒に長男家族の自宅を訪ねた。生後6か月あまりになる孫のK君はしばらく会っていなくても、目が合うとニコッと笑う。グルリと寝返りして、両脚をバタンバタンさせて、じっとしていない。キャッキャッと大きな声で笑うようになっていた。
前日は生まれて初めて保育園に行ったとか。最初は「慣らし保育」だそうで、そのときの写真を見たら、やっぱり目元に泣いた跡があった。
お嫁さんはパートに出始めたばかりで、会えないまま。でも、ちゃんと気遣ってくれていて、『父の日の』のお祝いに、珍しい国産ウィスキーをいただいた。
■もうトンボが飛んでいる。団地のなかを歩いていたら、赤トンボの群れが目の前を右に左に横切った。
そう誓っただけで、ずるずる先延ばしして、はや半年が過ぎようとしている。
こいつはまずい。ぼやぼやしているうちに、また月々の借り賃の1万円あまりが出ていく。さすがになまけ癖の尻に火がついて、自宅から歩いて4分の貸倉庫の整理に再チャレンジした。
ぎっしり詰め込んでいたときに比べれば、ぜんたいの3、4割は片付けたが、残っている荷物のほとんどは、ぼくが仕事場をたたんだときに持ち込んだものである。自分の責任で倉庫を空っぽにして、契約解除までやるしかない。
やっかいな荷物の象徴がいちばん奥の方に押し込んである本の山で、中型サイズの段ボール箱が15個も積み重なっている。なかには単行本や文庫本、資料などを詰め込んでいるから、どれもこれもがずっしり重い。へたに持ち上げると腰をやられてしまう。
大事な書物をこんなところに置き去りにしたときから、この日がくるのはわかっていた。どうしたものかとずっと気になっていた。まだ処分の仕方に迷っているけれど、ゴミに出さないことだけは決めている。
薄っぺらな油紙のようになったガムテープをはいで、10数年ぶりに箱の蓋を開ける。
けっして勉強熱心な方ではなかったし、読書家の人が見たら失笑するだろうが、よくもまぁ、カネもないのに、こんなにいろんな本を買って読んだものだ。
いちばん上にある分厚いマーケティングの本を手にとって、ぱらぱらとめくったら、黒い鉛筆の傍線がいっぱい引いてあった。そこにはそのときのぼくがいた。
改めて手にすると、評判の割にはたいしたことがなかった本もある。著者の名前にひかれて購入した本も出てきた。定説になっている内容を、流行り言葉のカタカナで化粧直ししただけのビジネス書も目につく。
反対に書店の本棚の隅っこに置かれていても、著者が精魂傾けて書いたことが伝わってくる希少な本も見つかった。友だちのデビュー作も、ぼくが書いた本もあった。
自宅に持ち帰る本は100冊ていどと決めている。どの本を手元に残すかの判断基準は、自分のこころと直感に従うことにした。おおまかに分けて、関心のある分野で、色あせない資料としての価値があるもの。また読みたくなるものの2点に絞った。
「この3冊で1万円も使ったのか…」。のっけからショックを受けて、それからはいっさい価格を見ないことにした。
戦略が決まれば、生産性が10倍アップするのは経営の本に書いてある通りである。箱を開けて、手元に残す本、処分する本を仕分けするのに3分もかからない。そして、この3分間はこれからの自分がやりたいことを一つひとつ確かめる時間でもあった。
今日の作業は段ボール箱を引っ張り出すだけで大汗をかいたので、午前中の1時間で止めた。なにごとも一瀉千里にやるとついつい頭も手先も雑になって、大事なものまで取りこぼしてしまうことがよくある。ここはひと息おいて、いったん腰を落としてから再開することにした。
「ほら、またこれだ」
そう決めたとたんに、もうひとりのぼくの声が聞こえた。言わんとしている次のセリフもわかっている。
「そうやって、いつもさぼるんだから」
■昨日は、午後からカミさんと一緒に長男家族の自宅を訪ねた。生後6か月あまりになる孫のK君はしばらく会っていなくても、目が合うとニコッと笑う。グルリと寝返りして、両脚をバタンバタンさせて、じっとしていない。キャッキャッと大きな声で笑うようになっていた。
前日は生まれて初めて保育園に行ったとか。最初は「慣らし保育」だそうで、そのときの写真を見たら、やっぱり目元に泣いた跡があった。
お嫁さんはパートに出始めたばかりで、会えないまま。でも、ちゃんと気遣ってくれていて、『父の日の』のお祝いに、珍しい国産ウィスキーをいただいた。
■もうトンボが飛んでいる。団地のなかを歩いていたら、赤トンボの群れが目の前を右に左に横切った。
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