消えた、幻のコメント2024年10月01日 10時48分

 過日、サンパウロにいる高校時代の同級生S君から電話があって、悔しそうに打ち明け話をはじめた。
「お前がブログに高校の同期会のことを2回書いていたから、そこに載せるコメントをふたつも書いたんよ。ひとつは400字詰めの原稿用紙で2枚分も書いたんや。それで投稿して、掲載されたかどうか確認したら、なぜかわからんけど、ふたつともぜーんぶ消えててな。がんばって書いたんだけどなぁ。でも、もう一度、最初から書き直す気力がなくてよ」
 お気の毒に。ぼくもときどきやらかすから、そのときの泣きたくなる気持ちはよくわかる。
 高校時代の大切な思い出を、彼らしい率直な言葉でつづったのだろう。惜しいなぁ。読んでみたかった。
 それでも久々に遠いブラジルからの元気な声を聞いて安心した。
 S君から「10月半ばに一時帰国する。また3人で飲もう」という内容のメールが届いたのは半月ほど前のこと。こちらからも返信のメールを出したり、電話もかけたのだが、何度やってもまったく無反応だったのだ。
 そんな不義理なことはしない男である。ぼくたち3人組のひとりのH君も心配して、「まさか、あいつ死んだんじゃないだろうな」なんて、とても本人には聞かせられない話までしていたのである。
 元気な声を聞いて、こちらの心配ごとは吹っ飛んだ。どうして連絡をくれなかったのか、その理由もわかった。
 原因は、彼のスマホが使えなくなったからだった。それは予想していた範囲内のこと。
 だが、精密な機械にはなんの罪もなかった。使えなくしたのはS君である。
 彼は友人と夜遅くまで大酒を飲んで、別れた後に酔いがぐるぐるまわって正常に機能しなくなった脳細胞のまま、スマホで何かやりたかったのだろう。そして、自分のおもい通りにならなかったスマホに腹を立てて、そこらに放り投げたのだった。
 翌朝、奥さんと娘さんからさんざん怒られたという。
 こうして彼もまた亭主と父親の威厳がぽろぽろ剥げ落ちていくのだ。おおぜいの男たちがたどる道である。
 酒でちょくちょく失敗していた大先輩たちもそうだった。
 ぼくの知り合いの画家は酔っ払って、財布の入ったズボンも、パンツも靴下も靴もぜんぶどこかに脱ぎ捨てて、素っ裸のままタクシーに乗って、夜明けにご帰還した。
 お世話になった酒好きの大学教授は、学生たちとコンパをやって、帰りのタクシーを降りた後、千鳥足がもつれて自宅手前の溝のどぶ水に頭から突っ込んで、メガネを割った。
 いかん、酒を飲んでもいないのに、こういう話になるとついつい調子に乗って、どんどん脱線してしまう。だんだんS君がすぐ隣の席にいるような気がしてきた。
 古い友人をダシにしたこんなブログでも、3人組のふたりは付き合ってくれるだろう。友とはありがたいものである。
 最後に、S君が一生懸命に書いてくれた「幻のコメント」に対して、「ありがとう」のひと言をこの場でお返ししておこう。

■カミさんは左の目に続いて、右の目の白内障の手術も無事に終わった。「ワァー、くっきり、はっきり見える」はさらに精度が向上した様子。
 これまで見えていなかった部屋のなかの微細な汚れも目につくようになって、「嫌になるね、どこもかしこも汚くて」と言いながら、いまもあちこちせっせと磨いている。逆に、鏡で自分の顔を見る時間は格段に少なくなった。

■室見川の堤防の斜面に顔をだした彼岸花。秋の彼岸はとっくに過ぎたのに、まだぽつぽつとしか花は開いていない。この夏の異常な猛暑のせいだという。

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