学習の始まりは、親のマネから2024年12月13日 18時19分

 長男のお嫁さんからカミさんに送られてきたLINEの動画を繰り返し見て、そのたびに夫婦して笑ってしまった。
 映っているのは初孫のKo君である。生後11か月が経って、いろんなことができるようになった。
 今回の動画は、自分で容器を持って、飲み物をおいしそうに飲んでいるところ。椅子に座って、両手のぽっちゃりした指で赤ちゃん用のボトルをつかんで、ちいさな口もとをすぼませてストローをくわえ、ジュースらしきものを勢いよく吸っている。
 両目をぱっちりと開いて、薄紅色のすべすべしたほっぺたを膨らましたり、へこましたりして、4、5回続けてジュー、ジュー吸って、ひとしきり飲んだら、ふうっと息を吐きながら、さも満足そうな声を上げた。
「あぁーっ」
 ひと息ついて、すぐにまたジュー、ジューやる。そして、またあどけない声を出す。
「あぁーっ」
 何かに似ている。表情までそうなっている。風呂上がりに冷蔵庫から取り出して、最初のひと口のときに出る声と顔である。
 親がいつもやっているマネをしているのだ。ふだんから見ているうちに、彼はちゃんと学習したのだ。ごくごく飲んだ後は、きっとこうするものなのだ、と。
 Ko君の一丁前の仕草を見て、ぼくたち夫婦が一致して浮かんだのは、けっして大酒飲みではないけれど、お酒が好きなかわいいお嫁さんの顔だった。仕事を終わって、家族だんらんのわが家に戻り、甘えてくるわが子の相手をしながら、うれしそうに一杯やっている様子がありありと目に浮かんだ。(△△ちゃん、間違いだったらゴメンナサイ。)
 あれは親のマネだなと直感したのは、Ko君の父親、つまりぼくの息子もそうだったからだ。
 ひところのぼくは歯磨きのやり過ぎで、「オェッ」と声が出ることがあった。朝早くからべったりくっついていた1、2歳ごろの長男も、幼児用の歯ブラシをちょこちょこ動かして、最後はやっと届く洗面台まで背伸びして、「オェッ」とやっていた。あのシーンを思い出したのである。
 Ko君が大きくなって、彼が酒を飲み始めて、「あぁーっ」が出るのはわりかしと早いとおもう。なにしろ、オムツをしたままで、酒のたのしみ方を身につけている。
  
■例の「花盗りばあさん」と花壇の前で立ち話をした。「同じ団地の住民だからね。人と仲良く暮らす方がいいとおもうよ」。叱らずに諄々と言ってきかせた。初めて、「ごめんね。もうしない」の言葉が出た。少し涙目になって、何度も繰り返していた。
 ここにも寂しい独り暮らしの老女がいる。別れ際に「からだに気をつけてね」と声をかけた。少しは会話ができたと信じたい。