おふくろの味、伝わるか2021年04月06日 17時43分

 今日も、朝から夕食のことを考えていた。もう5、6年も主夫をやっているのに、いまだにいちばん悩むのは食事の献立である。いちおう栄養のバランスを考える。それから旬の食材をあれこれおもい浮かべる。
 タケノコはまだ高いよな。スナップエンドウやブロッコリーはそろそろ終わりか。大羽イワシとさくら鯛は、この間、食べたし、いまはアサリか。でも、砂ぬきがなぁ。そうだ、イサキが出はじめたか。まてまて、冷蔵庫にアジの開きがあったっけ。
 値段、料理にかかる手間、そして、おいしいと言ってくれるかどうか。メニューが決まるまではどうも落ち着かない。
 迷った末に、今夜のメニューは「豚のコマ肉を使ったカレー味の肉だんご焼き」に決定。安くて、簡単、家族みんな好きだから、困ったときの切り札のひとつだ。
 この料理用に買ったのは豚のコマ肉2パック(約500g)だけ。ほかに必要なニラ、卵、カレー粉、片栗粉、塩はある。いっぱいつくって、明日のカミさんの弁当にも入れてもらおう。
 調理方法はすごく簡単だ。まず豚のコマ肉をドーンとまな板にのせて、包丁の先で肉片を広げながら、スッ、スッと2センチほどの幅に切り分ける。こいつをステンレスのボールにドサッと入れる。次に、ニラの束を刻んで、これもボールに放り込む。
 そこに塩をパラパラパラとふって、とき卵をドバッと加えて、カレー粉をバッ、バッ、バッ、片栗粉をパッ、パッ、パッと入れる。
 いちいち計量器は使わない、みんな見当で量を調整する。もっとスパイシーにしたければ、クミンやガムマサラ、コリアンダーをふりかけてもいい。あとは全体がなじむように手でこねて、食べやすい大きさにまるめるだけ。
 切って、入れて、混ぜて、形にするだけだ。技術なんて要らない。味みもしない。ただし、ニラとカレー粉は惜しまない方がいい。肉だんごはきつく固めるよりも、かるく形をととのえる程度の方が食感はよい。
 あとはフライパンにやや多めのサラダオイルを熱して、ほどよく焼きめをつけて、蒸し焼きにして、中まで火が通ったら完成である。味が物足りないときは、食べるときにウスターソースをつければOKだ。
 先ほどだんごの段階までつくり終わったので、いまこのブログを書いている。
 もともとは母の手料理だった。母は、豚肉はコマではなく、バラ肉や肩ロースの薄切りを、ニンニクの葉があれば、ニラよりもそちらの方を使っていた。また手でまるめずに、水溶き片栗粉の中に、卵やカレー粉、塩を混ぜた上で、肉ほかを入れてから、箸をつかって肉片とニンニクの葉をかるくまとめて、ちゃんと油で揚げていた。
 その方がやわらかく仕上がって、肉汁も多くて、食感もよく、ずっとおいしい。けれども、ぼくは油の処理が面倒なので、全部を一緒くたにして、ただ焼くだけという楽なやり方を編み出した。
 母はそうやって、一つひとつ手を抜かずに、毎日つくってくれて、大事に育ててくれたのだ。注いでくれた愛情がどんなにこまやかだったか、自分が親になるまで気がつかなかった。
 そんなことを思い出しながら、ぼくは家族に「どうだ、うまいだろう」と半ば強引に同意を求めるのである。

■写真は、だんごにしたところ。ふたつの皿いっぱいになった。

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