地獄の釜の蓋(ふた)が開いた2022年10月11日 09時32分

 7月8日、奈良市で起きた安倍晋三元首相の狙撃事件が旧統一協会(現世界平和統一家庭連合)と政治家たちの黒い関係をあぶり出して、岸田政権を直撃している。
 同じようなことが過去にもあった。地獄の釜の蓋が開いたのだ。
 ときの権力者にすり寄って、自己の欲望を満たそうとするものがいる。すり寄ってくる相手を利用してやろうという政治家もいる。もちろん、そこにはおいしい貢ぎ物が待っているし、その見返りも用意されている。持ちつ持たれつの関係だから、保身のための口の固さはお互いさまで、しっぽも出さないし、まずバレることはない。
 ところが、ある日突然、その密室をふさいでいる蓋がパカリと開く。なかをのぞいたら、いるわ、いるわ、甘い蜜を吸っている者たちが。
 あのロッキード事件がそうだった。記者時代に、当時の騒動を「地獄の釜の蓋が開いた」と例えていたものだ。今回の旧統一教会と一部国会議員たちの関係もこの言葉を連想させる。
 歴史は繰り返すという。そこで、過去の歴史を少しおさらいしておく。
 ロッキード事件が白日の下にさらされたのは1976年(昭和51年)2月。事件の内容は省略するが、これに関与した顔ぶれが人々の度肝を抜いた。
 逮捕されたのは、当時の最大権力者だった田中角栄前首相、橋本登美三郎元自民党幹事長、佐藤孝行運輸政務次官。時効成立で起訴されなかった、いわゆる灰色議員には二階堂進、福永一臣、加藤六月、佐々木季世などがいた。
 さらに全日空と丸紅のトップや幹部たち、右翼の超大物だった児玉誉士夫や田中角栄の刎頸(ふんけい)の友・国際興業社主の小佐野賢治も逮捕、起訴された。
 地獄の釜の蓋を開けてみたら、庶民とはかけはなれた著名な人物たちがウヨウヨうごめいていたのだ。しかも、このロッキード事件の奥には、まだ隠されている本丸の疑惑があって、それは軍用機のP3Cをめぐるもっと大規模な贈収賄事件だとささやかれていた。しかし、その固く閉ざされた地獄の蓋はとうとう手をかけられないままだった。
 1988年(昭和63年)6月に発生したリクルート事件もそうだった。
 江副浩正リクルート前社長がリクルートコスモスの未公開株を政治家や財界人たちに譲渡したもので、藤波孝生元官房長官らが起訴された。藤波は近い将来の総理総裁は間違いなしと言われていたが、この一件で完全に政治生命を絶たれてしまった。
 このときの未公開株をもらった顔ぶれもすごかった。
 当時のポストは省くが、政治家では中曽根康弘、竹下登、宮澤喜一、小淵恵三、安倍晋太郎、渡辺美智雄、橋本龍太郎、梶山静六、加藤紘一、森喜朗、野田毅など。まるで自民党のオールスターである。
 官僚では、高石邦夫前文部事務次官ほか。経済界からは真藤恒や牛尾治朗、諸井虔といった論客たち、日経新聞の森田康社長までいた。
 名高い学者の公文俊平の名前が出たときには、みんな金には困っていないだろうに…とあきれ果て、良識という壁が音を立てて崩れ落ちたようで、日本沈没かとおもった。
 リクルート事件が発覚したのは、川崎駅西口の再開発における便宜供与を目的として、川崎市助役へ株を譲渡した事実を朝日新聞がスクープしたから。このことがなければ、人々の尊敬を集めたまま生涯を終えられた人もいただろうに。
 そして、今回の旧統一教会をめぐる異常な事態である。
 旧統一協会との接点が確認されている国会議員は、岸信介、安倍晋三、細田博之、山際大志郎のほか、自民党議員だけでも180名にのぼる。故人の元首相がふたり、現職の衆院議長と経済再生大臣をはじめ、こんなに大勢いたのだ。もはや政界汚染、と言っていい。
 ここでも、こんな事実関係がバレるまで、ぼくたちは何も知らないままだった。
 だから疑ってしまうのだ。地獄の釜の蓋はもっとあるに違いないと。

■朝方、近くの室見川の遊歩道を散歩した。そこへ流れ込む小さな支流に架けられている橋の手すりの部分にカタツムリがいた。
 おい、お前は何を知っているのかな。
 スマホを片手に歩いていると、いろんなものが目に入ってくる。

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