ことしも快方に前進中2024年01月15日 16時58分

 ことし初の通院、化学療法の日。昨年4月24日からスタートして、19回目の抗がん剤の点滴を受けた。しかし、完全に効くという保証はない。がん細胞はからだのどこに潜んでいて、いつ暴れ出すがわからないという。
 どうなるかわからないけれども、こうして20回近くも点滴を続けてきたのだ。そこで、担当の外科医に、ずっと気になっていることを訊いてみた。
「抗がん剤を打っているあいだは、がんは再発しないんですか」
 答えはあるていど予想はしていたものの、現実は想像以上に甘くなかった。
「そんなことないですよ。化学療法をやっているときでも、(すい臓がんの場合)再発する人はいっぱいいます。そういう人の方が珍しくないですよ。体質的に抗がん剤が効かない人もいますからね」
「やっぱり、そうなんですね」
 ぼくはいまのところまったく異常なし。毎回、順調ですねと言われてきた。
「最近では、手術をした後に再発しない人は3割と言われています。少し前までの抗がん剤が効かなかったことを知っている自分たちからすれば、3割はたいへんな数字です。
 そこまで持っていくには時間もかかります。手術の技術が上がったこともあるし、いい薬が出てきたこともあって、どうにか3割に達したということです。7割の人は再発しています。このへんはぼくたちと患者さんの認識が違うんですね」 (※再発した患部はいろいろで、もちろん、治療してそれらのがんが消えた人もいるはずだ)
 手術がうまくいったからよかった。これでひと安心だな。
 患者はそう思いたいけど、数多くの事例を診てきた医者の認識はまた別、というわけである。それでも「3割は再発しない」と聞いて、近年の医学の進歩をこの身で再確認できた。
 診察時間は短くても、こちらの疑問や質問に対して、話をそらしたり、とりつくろうような発言はいっさいしない。こんなふうにはっきり説明してくれるので、ぼくはこの人を信用している。プロフェッショナルが目を光らせてくれている気持ちになる。
「ぼくたちの間では、△△さんはいけるかもしれないなとおもっているんです」
 ここまで踏み込んだ発言は初めてだ。立場上、どんなに良好な場合でも、絶対に「かもしれない」のひと言はつけるはずである。その彼の最後のひと言で、またいくばくかのやる気と安心感が積みあがった。
 楽天的な性格の方がいいんだよな、こんなときは。がんは治る病気になってきているんだから。
 一昨日は、長男に車で送り迎えしてもらって、カミさんと一緒に生まれたばかりの孫の顔をみてきた。ガラス戸越しに見る、ちいさな顔、ちゃんと目を開けて、ぷっくりしたまるっこい5本の指を開いたり、げんこつにしたり。お嫁さんも明るく元気で、ほっとした。
 真っ白な産衣(うぶぎ)にくるまっているあの顔を見たら、そう簡単にくたばってしまうわけにはいかない。

■昨日の日曜日。団地のなかの集会所前の広場で、餅つき大会をやっていた。男性陣が餅をつき、女性たちはつきあがった餅をまるめる役目。鹿児島にいた子どものころ、わが家の庭でもやっていた。
 ハイヨ、ホイサの合いの手に、ペッタン、ペッタンの音がして、待ち遠しくてますますお腹が減って、やっとできたてのやわらかいあんこ餅をもらって、その場でかぶりつくのがうれしくてたまらなかったなぁ。