待望の言葉がポン! と出た2023年01月28日 16時04分

 昨日の午前中、関東地方の市議選に初出馬する女性に電話を入れた。ネット上で仕事のご縁ができて、3回目の取材である。高級料亭ではいちげん客が裏を返して、3度目から馴染みとして扱われるというが、電話の取材でもそんな空気感が生まれてくる。こちらは仕事をもらっている立場でも、気になることはいまのうちに言っておいた方がいい。
 今回の電話の目的は取材というよりも、作戦会議をやりたかった。
 選挙戦では主役の候補者を敵も味方もじっとみている。当の本人はどんな戦略で戦うつもりなのか。戦場で掲げる幟旗(のぼりはた)には、どんなスローガンを打ち出すのか。これによって戦い方も決まる。そこのところを知りたがっているのだ。
 ぼくもそのあたりのことが気になっていた。だが、本人に質問しても、シンプルでわかりやすい答えが出てこない。このままでは自軍の意思統一もとりにくくなってしまう。選挙で負ける陣営に共通しているのは、選対事務所のなかが一致団結せずに、運動員たちの向いている方向もバラバラというのがお決まりの姿である。
 早くこのもやもやした気分を払拭したい。余計なことかもしれないが、そこをクリアする手伝いをするのも、演説原稿を任せられたぼくの役割かなとおもった。
 とにかく選挙戦略、もっとシンプルな言葉に置き換えれば、選挙のコンセプトをはっきりさせる必要がある。そして、全軍が同じ方向を向いて躍動するためには、そのコンセプトを全体で共有しておくことが絶対に欠かせない。
 これまでの2回の取材で、出馬の動機や市政への不満とか、市議としてやりたいことなど、ひと通りの彼女の気持ちや考えは聞いた。だが、将来の具体的なビジョンについて質問しても、話のほとんどは同じところをぐるぐるまわるだけだった。
 無理もない。だれもが通る関門なのだ。
 行政と法律の専門家である官僚出身の議員を除けば、初当選した国会議員たちは官庁の細かい組織や仕組みの知識もあやふやで、ほとんど新入生みたいなものである。一人前になるにはそれなりの経験と年数がかかるのだ。
 当選した暁にはいまの気持ちを切らさずに、必要な政策の猛勉強をすればいい。大事なことは、どんな議員になるか、ということなのだ。
 ただ、そうなる前に、選挙の経験がまったくない素人を待ち受けている壁に、彼女もぶち当たっている様子はよくわかった。
 こういう場合のやり方を知っている人は、すぐにピンとくるものがあるだろう。
 もったいぶった言い方は嫌いだが、それは「弱者の戦略」と呼ばれるものである。弱い者には、弱い者なりの戦い方がある。そして、こんなときの知恵はちゃんと先人たちがいくつも残してくれている。いずれにしても、戦いの場を自分の得意とする分野に絞り込むのが鉄則である。
 ぼくは作戦会議をしましょうと断った上で、こういう内容の話をした。
「あなたのいちばんやりたいことは××でしょ。だったら、わたしは市会議員として、その分野でダントツのナンバーワンになります、と宣言すればいいんじゃない。それがあなたの選挙戦のコンセプトになる。その一点に絞って、自信を持って、あなたの体験から得た行政への疑問やほかの候補者にはない特色を強調したらいい。
 ほかの候補者たちは変わり映えのしない、似たような公約ばかりを小さな花のように並べ立てるはずだから、あなたは新人らしく、大輪の花一本で勝負すればいいとおもうな」
 そんなことを話していたら、彼女の口から、だれもがおもいつかないような、それもいまのニーズにぴったりの短い言葉がポン!と出てきた。(機密事項だから、黙っておく)
 きっと、ずっとひとりで悩み苦しんいたのだろう。胸のなかでふくらんでいる思いのたけを、うまく表現できる言葉を探し求めていたに違いない。
 よかった、よかった。本人もこれで心の重荷がひとつ、吹っ切れたことだろう。久しぶりに、こんなやりとりをできることがうれしくなった。
 コロナでずっと家のなかに閉じこもっていて、めったに人と話すことはないけれど、やっぱり、こうやって人と話をするのはいいものだ。
 そうだな、あいつに電話しようかな。しばらく会っていない友の元気な声を聞きたくなった。
 さて、そろそろ選挙演説の原稿について、書く内容の整理でもはじめようかな。

■たくさんの小さな青い花で、長い間たのしませてくれたトレニアの後に、パンジーとノースポールの株を植えて約1か月。寒くて、雪も降ったし、なかなか次の新しい花が開いてくれない。ま、そのうち咲くさ。見守りながら、気長に待つことにしよう。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://ichi-yume.asablo.jp/blog/2023/01/28/9558810/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。