いい例になります ― 2023年11月30日 14時46分

11月も今日で終わり。今月は「暗」から「明」に切り替わる潮目になってほしいと望んでいたら、どうやらその通りになりつつある。
先日の定期診断で担当の外科医がこんなことを言っていた。
「4月24日からはじめた抗がん剤の点滴のデータも順調ですし、1年間やらなくてもいいかな。年明けの1月末にCT検査をやって、その結果で判断しましょう」
「もう抗がん剤を打たなくてもいいということですか」
「そうですね。結果によっては化学療法を中止します。でも、定期的な通院は続きますよ」
うまくいけば2週間に1度の憂鬱な点滴から解放されるかもしれない。治療の前倒しは大歓迎である。抗がん剤を止めれば体調はもっとよくなるだろう。
手術後の退院も予定より早かった。早く家に帰りたい一心で、開腹手術の傷の痛みをこらえて、ベッドの横でシャドーピッチングをしたり、病棟の廊下を黙々と1万歩も歩いていたのがよかった。
あの手術の前に、メスを握る医師が「△△さんは大丈夫ですよ。治ろうという意思が強いですから。そういう気持ちがないと病気はよくなりません」と言っていたが、その通りだとおもう。
外科の次にまわった糖尿病科の若い女医さんに、さっそく先ほどの外科医との話をした。ぼくのすい臓がんのことをとても気にしているのだ。
「本当ですか。すばらしいです。△△さんのような人は本当にめずらしいんですよ。先日、糖尿病の担当医のチームでカンファレンス(※患者の情報を報告して、今後の医療ケアを協議する会議)をしたんです。ほかにもすい臓がんの人がいるんですけど、そのなかで△△さんのことが話題になったんです。すごく順調だね、いいねという声があがっていました」
そんなふうに診(み)られているとは知らなかった。
この女医さんは糖尿病の患者がやってくると、病状に応じて入院をすすめる。そのときいくつもの決まった精密検査を行う。そして、その結果を真っ先に患者に告げる立場にある。最悪の場合、嫌でも応でも、がんの告知をしなければならないのだ。
みた目では、だれがその対象なのかわからない。しかし、患者本人も気がついていないがん細胞と確実に出あう。そのプレッシャーはたいへんなものだろう。短い時間ではあったが、彼女とはそんな話もした。
ぼくにすい臓がんを告げたときの彼女の暗い顔と沈んだ声を、いまでもはっきり覚えている。
糖尿病担当の自分にはどうすることもできない。なぐさめることもできない。ただ、事実ありのままを話すしかない……。ぼくが告知を受けた翌日も、「△△さんのことが気になって眠れませんでした。奥様には話されましたか」と言っていた。
こんな場面に、彼女は嫌というほど立ち会ってきたのだ。
「すい臓がんがみつかった患者さんのいい例になるように、がんばります」
「ぜひ、そうしてください」
がんばりますとは言ったものの、再発しないという保証はどこにもない。だが、「暗」から「明」への予兆をしっかりキャッチした気持ちにはなった。このブログも、がんの話題から少しずつ離れていけそうである。
今月は1回、飲み会をやった。来月は何年ぶりかで忘年会の予定も入っている。
■室見川を渡った西区にはあちこちにたんぼがあって、秋に刈り取った稲の株からいっせいに蘖(ひこばえ)が伸びている。寒空の下、ちゃんとモミをつけて、二度目の実りのときを迎えている。
先日の定期診断で担当の外科医がこんなことを言っていた。
「4月24日からはじめた抗がん剤の点滴のデータも順調ですし、1年間やらなくてもいいかな。年明けの1月末にCT検査をやって、その結果で判断しましょう」
「もう抗がん剤を打たなくてもいいということですか」
「そうですね。結果によっては化学療法を中止します。でも、定期的な通院は続きますよ」
うまくいけば2週間に1度の憂鬱な点滴から解放されるかもしれない。治療の前倒しは大歓迎である。抗がん剤を止めれば体調はもっとよくなるだろう。
手術後の退院も予定より早かった。早く家に帰りたい一心で、開腹手術の傷の痛みをこらえて、ベッドの横でシャドーピッチングをしたり、病棟の廊下を黙々と1万歩も歩いていたのがよかった。
あの手術の前に、メスを握る医師が「△△さんは大丈夫ですよ。治ろうという意思が強いですから。そういう気持ちがないと病気はよくなりません」と言っていたが、その通りだとおもう。
外科の次にまわった糖尿病科の若い女医さんに、さっそく先ほどの外科医との話をした。ぼくのすい臓がんのことをとても気にしているのだ。
「本当ですか。すばらしいです。△△さんのような人は本当にめずらしいんですよ。先日、糖尿病の担当医のチームでカンファレンス(※患者の情報を報告して、今後の医療ケアを協議する会議)をしたんです。ほかにもすい臓がんの人がいるんですけど、そのなかで△△さんのことが話題になったんです。すごく順調だね、いいねという声があがっていました」
そんなふうに診(み)られているとは知らなかった。
この女医さんは糖尿病の患者がやってくると、病状に応じて入院をすすめる。そのときいくつもの決まった精密検査を行う。そして、その結果を真っ先に患者に告げる立場にある。最悪の場合、嫌でも応でも、がんの告知をしなければならないのだ。
みた目では、だれがその対象なのかわからない。しかし、患者本人も気がついていないがん細胞と確実に出あう。そのプレッシャーはたいへんなものだろう。短い時間ではあったが、彼女とはそんな話もした。
ぼくにすい臓がんを告げたときの彼女の暗い顔と沈んだ声を、いまでもはっきり覚えている。
糖尿病担当の自分にはどうすることもできない。なぐさめることもできない。ただ、事実ありのままを話すしかない……。ぼくが告知を受けた翌日も、「△△さんのことが気になって眠れませんでした。奥様には話されましたか」と言っていた。
こんな場面に、彼女は嫌というほど立ち会ってきたのだ。
「すい臓がんがみつかった患者さんのいい例になるように、がんばります」
「ぜひ、そうしてください」
がんばりますとは言ったものの、再発しないという保証はどこにもない。だが、「暗」から「明」への予兆をしっかりキャッチした気持ちにはなった。このブログも、がんの話題から少しずつ離れていけそうである。
今月は1回、飲み会をやった。来月は何年ぶりかで忘年会の予定も入っている。
■室見川を渡った西区にはあちこちにたんぼがあって、秋に刈り取った稲の株からいっせいに蘖(ひこばえ)が伸びている。寒空の下、ちゃんとモミをつけて、二度目の実りのときを迎えている。
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