カミさん、パートを始める2024年12月10日 18時23分

「行ってきまーす」
「はい。行っておいで」
 半年ぶりになじみの会話が復活した。昨日からカミさんは早起きして、パートに行き始めた。勤め先は友だちが紹介してくれた会社で、仕事は社会人になったときからずっとやり続けていたデータ入力である。
「あの仕事はもうたくさん。二度とやりたくない」と話していたが、結局そこしかなかった。
 履歴書に記入した年齢は68歳。その会社の定年は65歳だから、両手の指を機械のように速く正確に動かし続ける即戦力として雇われたのは、おそらく稀有のことだし、幸運であった。
「68歳と言っても、もうすぐ69歳になるのよ。よく雇ってくれたよねえ」
 本人もそう言っている。
 先日は元同僚の友だちと3人で昼食会があり、再就職祝いまでいただいた。「データ入力の仕事はもう絶対にしないとあれほど言ってたのに、またやるんだもんね」とさんざん話のタネにされたという。
 だが、ちょっと考えてみればわかることだが、シニアがリタイアした後、それまで培ってきたキャリアを活かせる場はほとんどない。その点、カミさんは恵まれている。雇用期間は繁忙期が終わる3月末までだが、場合によっては延長もあるとか。
 始まったばかりなので、本人はぐったり疲れて帰ってくる。痛々しくて、申しわけなくなってしまう。
「この歳になって無理はしないでほしいけど、70歳の現役キーパンチャーというのも、後に続く人たちのためにはいいことかもな。白内障の手術もして、目がよく見えるのだから、ここまできたら最高年齢の記録更新に挑戦してみたら」
 まだまだ若いよ、大丈夫だよと応援したつもりだったが、聞きようによっては、「家にいないでくれ」と言わんばかりのセリフが口からヒョイと出た。
 言ってしまった後で、ドキリ! とした。「亭主元気で留守がいい」というフレーズが頭をよぎった。
 これではまるで早くそうなってほしいと秘かに待ち望んでいたみたいではないか。
 ここまで書いてきて、この小文をブログに載せていいものかどうか、半年ぶりに主夫の役目に戻ったぼくのこころに、迷いが生じている。

■ぼくたち夫婦で世話をしている花壇。昨日、例の「花盗りばあさん」から今季初めて開いたばかりのノースポールの花を盗られた。(※写真では見えないが右手奥にある)。
 いつも彼女が腰に巻いているバッグからその白い花が顔を出していた。ここの窓から丸見えなのである。
 これまで現場を押さえて二度注意したが、まるで柳に風だった。彼女の「犯行現場」を見た人は数人いる。最初はちょっとボケているのかな、かわいそうだなと思ったが、どうやらその場しのぎの「擬態の疑い」は無きにしもあらず。
 うーん、とんだ「花好き」が引っ越してきたものだ。

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