参院選にみる政党のネーミング2022年06月26日 09時41分

 選挙戦たけなわの参議院選挙。ここ福岡選挙区は改選3に対して、過去最多の16人が立候補している。16人も立候補したのだから、朝から騒がしくなるだろうとおもっていたが、さにあらず。このあたりはいたって静かなものだ。
 今回の選挙戦の争点も、ここ数年の国政選挙と同じようにはっきりしない。政権与党の優位性を生かして、野党の目玉政策を次から次へと横取りする争点隠しは、安倍政権が味をしめた常套手段だった。対立するものをなくしてしまう。これが投票率の上がらない、仕組まれた原因だった。
 結果、自民党への批判票は伸びずに、安倍は勝ち続けた。今度も投票率は低いだろうな。
 さて、衆議院と参議院では選挙区の広さがちがうので、選挙の戦い方も異なる。参院選は候補者の個人戦というよりも、政党の戦いの色合いが濃い。そのあたりに眼をこらしてみると、いまの政界の絵模様が浮かび上がってくる。
 このところ、政党の数は細胞分裂のように増えた。指を折りながら、政党名を一つひとつ数えていくと途中でこんがらがって、頭がくらくらするほどだ。
 たとえば、民主党の文字がつくものだけでも、自由民主党、立憲民主党、国民民主党、社会民主党(社民党)と4つもある。まるで同じ一族のようではないか。せめて名前だけでも、もっと差別化をはかれないものだろうか。
 日本の議会政治の歴史で、野党は常に分裂を繰り返してきた。自民党内の争いは派閥の形でおさまるが、野党は、党そのものが木っ端みじんに空中分解する。そして、自分たちこそが本流だというプライドは高いから(だから同じような政党名になる)、たちまち骨肉の争いに転落して、無益なしこりが残る。こうやって野党は分裂するたびに弱体化してきた。
 固い話はぬきにして、ほかの政党の名前をみていくと、これがなかなかおもしろい。
 その代表格が「日本維新の会」と「れいわ新選組」。
 パッと浮かぶのは、かたや明治維新の志士、こなた池田屋事件の新選組。さながら幕末の様相である。いや、両者とも、いまは幕末同様の大転換期だから、こうして立ち上がったのだと言いたいのかもしれない。
 それにしても新選組とは。はなはだ失礼ながら、はじめて聞いたときには、創設者が元俳優なので、チャンバラを売り物にする劇団のことかとおもった。
 きちんと党の綱領を読めば、その政治使命はなるほどと頷けるのだが、新選組という言葉が発散するイメージは、この政党にとって、はたしてプラスなのだろうか。ま、余計なことだけど。
 一方の日本維新の会の前身は、大阪維新の会。その大阪維新の会が発足当時に発表したのが「維新八策」だった。
 さすがは大阪人、でんな。それって、坂本龍馬はんの「船中八策」のパクリやおまへんか。ホンマ、おもろいなぁ、大阪ちゅうところは。政治のはなしまで、笑わせてくれるわ。
 維新(-世の中のすべてが改まって、新しくなること-)という言葉には、ある種の魔力を感じる。劇薬といってもいいかもしれない。
 なぜかといえば、維新が使われた言葉には、明治維新だけでなく、昭和維新があった。
 昭和維新で連想するのは、西郷隆盛、桂小五郎、坂本龍馬などではない。思想家の北一輝や二・二六事件、そして、そこから先につながって行った日本国破滅の道だ。あの三島由紀夫も「昭和維新」の到来を熱望していたことを思い出す。だから、あえて「劇薬」と書いた。
 もちろん、日本維新の会と昭和維新とはなんのつながりもない。先の衆議院選挙では既成の野党勢力とは距離を置いて躍進した。今度も台風の目になるかもしれない。
 言葉のイメージは勝手に増殖するものだ。れいわ新選組も、日本維新の会も、前時代的なイメージではなく、いまの時代にふさわしい、新しいブランドイメージをつくりあげることができるだろうか。
 かつて、サラリーマン新党、スポーツ平和党、福祉党、年金党、ちきゅうクラブ、日本女性党などの政治団体があった。好き嫌いは別にして、ユニークな政党の名前があれこれ出てくるのも、その時代を物語るひとつの現象だろう。選挙にはそういった一面もある。

■自宅近くの参議院選挙ポスターの掲示板。まだ、ポスターを貼っていない候補者がいる。不可解なのはNHK党だ。ここ福岡選挙区には、男性1人、女性2人の計3人も大量に立候補したのに、その選挙ポスターはいまだにゼロ。資金力も、組織力も脆弱な戦法として、その作戦の狙いはおおよその見当がつく。それにしても、どんな選挙運動をしているのだろう。

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