天井裏の浸水にあわてる2024年07月03日 23時43分

 前回のブログで、集合住宅の上下階で暮らす家族のトラブルの一端にふれた。困ったものだなぁとおもっていたら、今度は自分たちにその順番がめぐって来た。
「わぁーっ。大変! 水が漏れてる。すごいことになってるよ」
 カミさんが叫び声あげたのは今朝の11時ごろ。
 ぽたっ、ぽたっ、ぽたたっ、ぽたっ、ぽたたっ、ぽたたっ。
 ひっきりなしに玄関の天井から大粒の水滴が落ちている。
「こりゃあ、ひどい。上の階の人かな」
 狭い板の間は、あっという間に水びたしになった。
 薄茶色の天井に隠れている細い罅(ひび)割れの線がくっきり正体を現して、その断面からしみ出た水がみるみる大きな玉になっていく。そいつらがあちこちから、ぽたっ、ぽたたっ、と途切れなく落ちている。傘を差したくなるほどだった。
 ぼくたちの住居は公団住宅の3階である。火事の火元ではなくて、漏水の出元は4階か、それとも5階か。5階建ての建物だから、そのどちらしかない。
 カミさんと協力して、大慌てで大型の収納ケースの空箱2個とバケツを置いて、雑巾やタオルを床に敷き詰めていたら、ピンポーン!と玄関のチャイムが鳴った。
「水が漏れているんだけど、お宅じゃない?」
 2階のUさんだった。ぼくたちの下の階まで迷惑千万な音無しの客は平気でお邪魔していたのだ。
 男性のぼくが「あのう、もしかしたら、お宅から水が……」と出て行くと、それだけで相手さんは緊張するだろうから、カミさんに真上の4階と5階のお宅へ走ってもらった。
 ついでに、確認のために玄関ドアの外にある水道管の元栓を締めていいかの了解もとりつけた。もちろんURの住まいセンターにも水漏れの一報を入れた。
 部屋を見まわったら、水漏れはトイレでも発生していた。北の小部屋の整理棚や畳の上にも小さな水たまりができていた。このままでは押し入れの中までやられてしまう。
 大雨の被害で床下浸水はよくあるけれど、こちらは晴れた日の天井裏浸水である。床下と違って、天井だから土嚢を積んで防ぐことも、ポンプで排水することもできない。頭の上からの浸水は、水の出元を止めない限り、打つ手なし、である。
 またたく間に、2階から5階のご近所さんたちを巻き込んで、「いったい水が漏れているのはどこですか?」の騒ぎと相成った。
 公団住宅は古い建物だから、こんな騒動はいまに始まったことではない。恥ずかしながら、わが家は真下の2階どころか、その下の1階まで水びたしにしてしまった伝説の大水害を引き起こしたこともある。
 人は加害者になったり、被害者になったりを繰り返しているうちに、だんだん相手の気持ちもわかってきて、そんな気にしなくてもいいですよと寛容になる。この古い団地に長くいる人は、どちらかといえば短気の人は少なくて、気の長い人が多いようにおもう。それだけいろんなことがあって、いろんなクセのある人と付き合って来たのだろう。
 さて、URからの緊急出動の要請を受けた業者の人たちは20数分で駆けつけてくれた。すぐ上階のご家庭に行ってくれて、ほどなく水漏れの原因はわかった。
 水の出どころは、やはり4階だった。大量出水の元はトイレで、なんでも洗浄便座の一部が破損して、そこから水が出っぱなしになっていたという。
 たまたまこの部屋のご主人は留守だった。奥さんは長患いで寝込んでいる。高齢者夫婦にありがちな危惧する場面が、今回は水漏れとなって露出したわけだ。
 感じのいいご夫婦である。だれが攻められようか。
 業者の人が駆けつけて、応急処理をしてくれたお陰で、水がにじみ出てくる勢いは徐々に弱くなった。最後の、ぽたっ、ぽたっ、が止まったのは、夕方の6時過ぎだった。
 きょうは梅雨の晴れ間で、大雨警報とも無縁の日である。よりにもよって、こんなときに限って、出水騒ぎが起きた。
 だが、振り返ってみると、「よりにもよって、こんなときに限って」は、案外、珍しくもないのではとおもう。

■そろそろかな、と樫の木に近づいてみる。やっぱりありました。秋を彩るどんぐりの実がいつの間にか大きくなっている。

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