髪の毛を、うんと短くした2025年06月06日 10時59分

 昨日、午後3時半。車で7、8分のいつもの床屋さんに行って来た。お店はこの時間帯が空いている。やっぱり先客はいなくて、すぐ鏡の前の椅子に座れた。
「バッサリ、やって。いつもだいぶ短くしてもらっているけど、もっと短くしたら、おかしいかなぁ。髪の毛が抜けて、どんどん頭が薄くなったけど、もう自然に逆らうのは止めた。大将みたいな頭の方がすっきりして、いいかもしれないなと思って」
 もう30年以上のつきあいになる大将の頭は、初めて会ったときから、茹で卵の殻をむいたような、灯りのついた裸電球のような、ピカピカのきれいな丸坊主である。
「短くしても、ぜんぜんおかしくないですよ。ときどき、わたしみたいな頭になりたいというお客さんもいるけど、やめとき、と言ってます。夏はヤケドして、皮がむけます」
 30年前のぼくの髪の毛はふさふさだったのに、とうとうこんな会話をするようになった。
「ヤケドはいやだなぁ。じゃあ、思い切って、うんと短くして」
 病気の話はいっさいしない。「髪の毛が抜ける、自然に逆らわない」と言ったのは、予告編みたいなもので、そうなったときの先手を打っておく意味もあった。
 まったく渡世というやつは、人からその人のまわりの人たちに、こちらの話がどう広がるかが気になって、いろいろ余計な気を遣う。
 ここの大将はぼくよりも少し年齢が下で、数年前に脳梗塞になって、店から救急車で運ばれたことがある。ひところは舌がもつれて、うまくしゃべれなかったが、ちゃんとハサミも、カミソリも使えた。昔かたぎのプロ根性の持ち主である。
 以前住んでいた小倉に、「安い、早い、うまい」を売り物にしていた『三徳うどん』があった。この床屋さんは「上手い、早い、安い」で、腕もいい。だが、交通量の少ないところで、店構えも地味だから、若い客は寄りつかない。年金暮らしの年寄りばかりがやって来る。
 よく見かける格安のチェーン店ではない。カット、髭剃り、シャンプーもきちんとしている。客との会話もしゃべった方がいいか、このまま静かにしておくか、ちゃんと呼吸をわきまえている。そんなリラックスできる、ありがたいところ。
 これで料金は、大人が1,680円、65歳以上は1,470円。相場の半値以下で、米騒動が起きているご時勢では、もっと光が当たってもよさそうなものだが。
 大将はここ2、3年前から、「そろそろ店を止めようかな」と言いだした。パートナーの奥さんも反対する素振りはない。懐具合のさびしい常連客は気が気ではなく、「オレたちを見捨てないくれ」の声があがっているという。
 なんでもかんでも世代交代だよなぁ。次から次に、いいものが消えて行くなぁ。
 いつ見捨てられるかもわからないご同輩のみなさんの思いも同じだろう。
 お陰で、頭もすっきりして、軽くなった。カミさんも「いいじゃない。髪の毛は短い方が若く見えて、いいよ」と言ってくれた。
 ちょっと待てよ。これも予告編なのだろうか。

■ブログに書いた桑の木。枝にいっぱい実がついている。何度か食べてみて、わかったことがある。わが家のベランダにある桑の実の方がもっと甘くて、ジューシーだった。
 おそらく実が多過ぎるせいだろう。この桑の木は自然の成すがまま、そっとしておこう。

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