言葉には人を変えるチカラがある2026年05月02日 18時48分

 朝刊を開けたら大好きな人の記事が載っていた。
 2年ぶりかな。迷わず電話した。着信音1、2回であの明るい声が返って来た。気持ちまで一発でつながった感じである。
「ああ、どうも、どうも。どう? 元気?」
「ご無沙汰です。新聞、見ました。相変わらずやってますね。I さんらしいなぁ」
 そのレポート記事によると、Iさん(79歳)は北九州市立のY図書館と共催で「読書サロン」を開催したという。50~80代の男女9人がテーブルで差し向いになって、自分たちが読んでいる本や知ってほしい本、作家のことなどを1時間半ほど話し合ったそうだ。
 いわゆる一般参加型の企画で、募集の方法は館内にチラシを張り出しただけだった。こんなやり方では人が集まるかどうか、フタが開くまでわからない。
「リスクがあるのに、よくやりますね。ふつうの人はやらんでしょ」
「本が好きだからね。やると言った以上、ひとりでも参加してくれる人がいたら、やらなくちゃいかんでしょ」
 彼はこれまでも毎月4、50人も参加する定例の飲み会や国際関係の勉強会、NPO法人の代表など、5指にあまる異業種交流会や勉強会を立ち上げて、身銭(みぜみ)を切って引っ張って来た。それらの会報やこまめに書いた彼の原稿の数と量だけでもたいした価値がある。
 80歳が近いので、若いころのようにはいかない。数年前には大手術をしている。その後遺症が出て、なんと昨日まで入院していたというではないか。
 彼との出会いは、ぼくが50代になったころだった。初めてお会いしたときからウマが合った。そして、還暦を迎えたときに、彼はこんなアドバイスをくれたのだ。
「△△さんもそろそろ外に向かって発言しなくっちゃ、もったいないですよ。人の話を聴くばかりじゃなくて、今度は自分が人に話す番で、人に伝える年齢なんだから」
 そのひと言がぼくを変えたと言ってもいい
 ある日、彼から電話がかかってきた。
「△△さん、うちの図書館で話してくれませんか。講演のテーマは、上手な広報のやり方がいいかな。やってくれるやろ」
 それまでのぼくは取材をする側で、話をする側ではなかった。でも、「これからは自分が話す番」というあのひと言が新しいチャレンジへのきっかけになっていた。やってよかったとおもう。
 癌のことも Iさんには隠す必要がない。最後は「まだまだやることがありますね」というエールの交換になった。
 言葉には人を変えるチカラがある。自分が追いかけたくなるような、ああいう先輩が次々にいなくなってしまった。せめて、そのお人柄だけでも、こうして書き留めておこう。
(このブログは3日前に書いた。体調がすぐれず、推敲できずにそのままにしておいた。もう大丈夫です。)

■新緑の室見川。杖をついて、転ばないように、ゆっくり、ゆっくり歩く。途中のベンチで、しばらく5月の風に吹かれた。明日3日と4日、福岡市は『博多どんたく港まつり』の日。例年のことながら、この祭りがあるときは雨の予報。

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