抗がん剤で、人相が変わった2026年01月25日 18時42分

 新しい抗がん剤に切り替えて、自分の人相が変わった。今週のはじめごろから急激に髪の毛が抜けはじめた。こうしていてもパラパラ、パラパラ落ちる。
 坊主頭の上から白いパウダーを薄くふりかけたみたいだ。茶色がかった短い銀色の髪の毛を指先でつまむ。4、5本がわけもなく抜ける。地肌がはっきり透けて見える。
 もう止めようがない。完全になくなるまで秒読みの段階になった。
「写真を撮ってよ。記録しておくから」
 カミさんにそう頼んだのは4日前のこと。一日一日、すごい勢いで抜けていく。脚はふらふらするし、道ばたで転ぶのが恐ろしくて、歩幅を狭くして、ゆっくり、ゆっくりとしか歩けない。だれが見ても、「あの人、きっと癌だな」と一発でわかってしまうだろう。
 75歳でよかった。頭がハゲていてもおかしくない歳だから。だが、ちょっと見方を変えれば単純な話で、ぜんぶ抜けてしまえばこの悩みも消える。それから先はまた生えてくる楽しみに変わる。女性なら、そうはいかないだろうが。
 副作用は脱毛だけではない。いろんな形で出ている。結構、きつい。こいつを飼いならすにはもう少し時間がかかりそうだ。
 さて、体調の経過報告はこれぐらいにして、同じすい臓がんで、神奈川県立がんセンターに入院中の後輩・Ka君との交流について触れておこう。(彼は本日の午前中に、一時退院した)
 ひとつわかったのは、地域による医療レベルの差である。彼からのLINEのメールに、「すぐに遺伝子パネル調査をして、その人に合う薬剤を特定して、治療を始める」という担当医師の言葉があった。
 遺伝子パネルって、なんだろう。ぼくがお世話になっている病院では聞いたことがない。素人だから迂闊(うかつ)なことは言えないし、わが医療チームを否定するわけではないけれど、正直、最先端の医療を受けられるのがうらやましくなった。
 Ka君は「なんでもやろうの精神」が人並み以上の男である。ガンに立ち向かうおすすめの本も紹介してくれた。参考までにタイトルは、『がんが自然に治る生き方』という。彼が写真を撮って、送ってくれた書き出しの文章を読んだら、興味が湧いて来た。さっそくアマゾンに注文した。
 そう連絡したら、すぐKa君から返信が来た。
「必死に生き延びる情報を集めて、できそうなものから実践していく話を読んで、とてもやる気が出て、自分に合った方法を早く見つけて取り組みたくなります! 退院したら、早速……などに取り組みます。お互い、自分に合ったやり方を自慢できるようになりたいですね」
 いいね、この考え方、この姿勢。こちらもそうしよう。
 彼はいろんなことを教えてくれる。ぼくは先輩として相談に乗って、励ます立場なのだが、早々とその役目は入れ替わったようである。
 得がたい同伴者ができた。ぼくも入院していたときにつくづく感じたことがある。孤立するのがいちばんよくない。こうして同じ病気の話し相手がいるのはこころ強いものだ。
 先日、近くにいる高校時代の友・Sa君が、地元にある「がん相談支援センター」についての情報をくれた。調べてくれたのだ。「元気になって、原稿も書いてよ」という。彼とは若いころ、『伊豆の踊子』の舞台になった伊豆山中をぶらぶら歩いて、夜はちいさな宿で一杯やった仲である。
 昨年9月に挑戦した短編はSa君にも見せた。予想通り落選したが、ああやって書くこと自体が楽しかった。自分に向いているとおもった。
 こうして書いているうちに元気が出て来た。さぁ、またやるか。

■カミさんと一緒に糸島方面に車を走らせて、人気の「伊都菜彩」に行った。ここは地元でとれる農産物や海産物の直売所。珍しいミカンを買った。